宣伝広告をはじめとするマーケティング活動において重要かつ常に主導的な役割を担うキャッチコピーーー。
このキャッチコピーについては、このサイトでも様々な切り口から記事にしてきましたが、これまでその具体的な作り方を正面から取り上げたことはありませんでした。
関連して説明すべきことがあまりにも多く、ひとつの記事ですべてを説明しきるのが難しかったからです。
しかしここへ来て、関連記事がようやく出揃った感もありますので、今回、意を決して取り上げてみました。いわば満を持しての挑戦です。
結果として思いのほか長くなってしまいましたが、その分、中身も濃くなっているはずです。自画自賛になりますが、得るところは少なくないと思います。最後までお読みいただけると嬉しいです。
なお一口にキャッチコピーといってもそこには様々な種類があり、ひとからげに扱うのは難しいので、ここではセールスレターにおけるキャッチコピーに絞って解説いたします。
セールスレター本文の書き方についてはこちら→セールスレターの書き方
セールスキャッチコピーとは?
まずはじめに言葉を整理しましょう。
「セールスレターにおけるキャッチコピー」とは何でしょうか? 字面通りの説明になりますが、セールスレターで使用するキャッチコピーを意味します。
セールスレターというのは売ることに特化したコピーです。通販サイトの商品紹介文やいわゆるランディングページの文章をイメージするとわかりやすいでしょう。
あまりなじみのない言葉ですが、このセールスレターにおけるキャッチコピーをここでは、「セールスキャッチコピー」と呼ぶことにします。
また、セールスレターは通常、いくつものパーツに分かれており、各パーツごとにキャッチコピーが付いているのが普通です。ここでは、それらをすべて「セールスキャッチコピー」と呼ぶことにします。
ちなみに、ここではそれらをどう書き分けるかを中心に解説していきます。
そもそもコピーとは?
ついでですので、コピーそのものについても、もう少し深掘りして整理してみましょう。
コピーというのは、ある特定の目的を達成するために戦略的に練られた文言です。もともとマーケティングの世界で使われていたものですが、最近では政治の世界などでも普通に使われるようになってきました。
形式の面からいうとコピーはキャッチコピーとボディコピーのふたつに分かれます。キャッチコピーというのは、通常、比較的大きめの書体で書かれた短めの文言で、ボディコピーというのは、そのあとに続く比較的長めの文章です。
キャッチコピーの役割はその名の通り、目を惹くことにあります。何のために目を惹かせるかというと、ボディコピーを読んでもらうためです。すなわちキャッチコピーの最大の目的は、読者の目を惹いてボディコピーを読むよう誘導することにあるのです。
またボディコピーというのは通常、商品の説明文であり、その目的は商品の魅力を伝え、実際に購入を促すことにあります。
ところで、コピーというと、多くの人がキャッチコピーを思い浮かべるように、ボディコピーよりキャッチコピーの方が重要だと一般には思われているようです。
もちろん実際にはどちらが重要でどちらが重要でないといったことはないのですが、本質的なレベルでいえば重要なのはむしろボディコピーの方です。
というのも、コピーライティングの最終目的ーー通常は商品購入ーーを果たすよう読者に促すのはボディコピーの役割だからです。
一方、キャッチコピーの役割は今も述べたようにボディコピーへ誘導することであり、それ以上でもそれ以下でもありません。
つまり、キャッチコピーはボディコピーを読ませるためのきっかけにすぎないということです。
このことは、次のAIDMAの観点からみるとよりわかりやすいかもしれません。
AIDMAとは?
AIDMA(アイドマ)は、コピーライティングが消費者に及ぼす作用を一連の心理的プロセスとして示したもので、いわゆる購買行動プロセスモデルのひとつです。
それによれば、消費者はまず商品を認知し (Attention)、興味を抱き (Interest)、ついで欲しいという欲求が喚起され (Desire)、さらにそれを記憶し (Memory)、最終的に購入に踏み切る(Action)とされています。
なおダイレクトマーケティングにおいてはその性格上、Memoryの代わりにConviction(確信)が入ります。こちらはAIDCA(アイドカ)と呼ばれています。
AIDCAで分析するコピーライティング
では、このAIDCAでコピーライティングを分析したらどうなるでしょうか?
コピーに接した消費者の心理的プロセスは、次のような流れになります。
キャッチコピーを読んだ(注目=Attention)消費者は、さらにボディコピーを読んでみようと興味を抱く (Interest)。
ボディコピーを読んだ消費者は、そこで商品への欲求が喚起され(Desire)、またそこに書かれていることが信用に足ると納得し(Conviction)、そして購買行動へと至る(Action)。
ここからもわかるように、コピーライティングの最終目的であるActionを促す役割を担っているのはキャッチコピーではなくボディコピーの方です。
それに対してキャッチコピーはあくまでボディコピーへ誘導するという限定的な役割を担っているにすぎません。
先ほど、本質的なレベルで重要なのはキャッチコピーではなくボディコピーであると述べたのはそのためです。
例外もある
ただしここには例外もあります。
ボディコピーなしでそれ単体で目的を達成するキャッチコピーが存在するからです。
そのひとつが、イメージコピーです。
イメージコピーというのは、いわゆるイメージ広告で使われるキャッチコピーです。
こんなコピーです。
キミが好きだと言うかわりに、シャッターを押した。
10代で口ずさんだ歌を、人は一生、口ずさむ。
これらのイメージコピーの目的は、一般にブランドに対し良い印象を持ってもらうことにあります。そのため通常、キャッチコピーを読んでもらうだけで、その目的が達成できるように作られています。
なかにはボディコピーがついている場合もありますが、一般にそれは付け足しにすぎません。読んでもらえたらなお効果的ではあるものの、別に読んでもらわなくてもかまわないという程度のものです。
ボディコピーなしでそれ単体で目的を達成するキャッチコピーにはもうひとつあります。一部のセールスキャッチコピーです。
とくに商品を網羅した通販サイトやカタログなど、複数の商品からどれかを選んでもらうことを目的としたキャッチコピーがその典型です。
また店頭POPや一部のチラシのキャッチコピーもそれに含まれます。
それらは、目に触れた時点で購入を促すことが目的であり、ボディコピーとの連携は通常、考慮されていません。
つまり、そうしたセールスキャッチコピーは「目を惹き」「興味をかきたてる」だけでなく、「欲求を喚起し」「購買行動を促す」という、ボディコピーが果たすべき役割をも単体で担っているのです。
ここでは便宜上、それらを「単体キャッチコピー」と呼ぶことにします。
キャッチコピーといった場合、一般にこのあたりが整理されないまま一緒くたに語られることが多いので、とくに初心者の方は混乱しないよう注意しましょう。
コピーに関する整理
ここで頭の中を整理するため、いったんまとめておきます。
●コピーにはキャッチコピーとボディコピーのふたつがある
●キャッチコピーの本来の役割はボディコピーを読ませることにある
●ボディコピーの役割は消費者に購入を促すことにある
●コピーといった場合、通常、キャッチコピーとボディコピーの両方をさす
●キャッチコピーといった場合、次のふた通りがある
・ボディコピーを読ませる役割をもつ本来のキャッチコピー
・単体でボディコピーの役割も兼ねたキャッチコピー(単体キャッチコピー)
●単体キャッチコピーには、イメージ広告のキャッチコピーと一部のセールスキャッチコピーの二種類がある
ここでは、本来のキャッチコピーを念頭において解説します。要はセールスレターにおけるキャッチコピーをイメージしていただければよいかと思います。
コピーライティングについてもっと詳しく知りたい方はこちらをお読みください↓
広告コピーとは? セールスコピーとの違いから知るその本質と目的
効果的なキャッチコピーの作り方
さて、ここからがいよいよ本題です。
このセールスキャッチコピーを、それも効果的なそれを作るにはどうしたらよいのでしょうか?
ここで必要なのは、まず目的を明確にすることです。目的が明確でなければ何をもって効果的と判断すればよいのか、その指標がわからないからです。
では、セールスキャッチコピーの目的とはなんでしょうか?
売ること?
いいえ、違います。
何度も言っていることですが、ここでいうセールスキャッチコピーの直接の目的はボディコピーへ誘導することにあります。
ではボディコピーへ誘導するためには何をどうしたらよいのでしょうか?
ここではそれに必要な要素は何かというところから考えます。
ボディコピーへ誘導するために必要な要素とは一体なんでしょうか?
それはAttention(注目)とInterest(興味)です。
このことは、先ほど触れたAIDCAによる分析からも明らかでしょう。AIDCAで、キャッチコピーに対応するのが「Attention」と「Interest」だったことを思い出してください。
注目
では、ここでいうAttention(注目)ですが、具体的には何をもってくればよいのでしょうか?
原理的には注目を集めるものであれば、なんでもかまいません。時事ネタであろうと芸能ネタであろうと、はたまた下ネタであろうと、耳目を集める話題であれば「Attention」の役割は果たせるからです。
しかし、もちろん実際はそうもいきません。なぜなら、商品とは無関係な話題では販売につながらないからです。
仮にそのような話題で注目を集めることができたとしても、ボディコピーまで読んでもらうことは難しいでしょう。たとえ読んでもらえたとしてもそれで商品が売れることはまずありません。
ならば、どんな話題を持ってくればよいのでしょうか?
ここでオススメなのが、キーワードです。
キーワードというのは、消費者が抱えている悩みや課題に関連して連想される言葉のことです。もっとわかりやすくいえば、「気になる言葉」です。
たとえば眠りが浅くて悩んでいる人であれば、「不眠」「枕」「寝不足」「安眠」「快眠」「元気溌剌」などがそれに相当するでしょう。
そして、それら気になる言葉は、その性質上、他の言葉に比べて目に入りやすい性質をもっています。
すなわち、気になる言葉にはそれ自体に注目させる機能が備わっているのです。その「気になる言葉」が、ここでいうキーワードです。
ちなみに、この気になる言葉ーーキーワードーーは、マーケティングの世界では「インサイト」と呼ばれ、きわめて重要なものとされています。
インサイトについてより詳しく知りたい方はこちらもぜひお読みください↓
興味
次にInterest(興味)についてみていきましょう。
キーワードには注目を集めるだけでなく、興味をかきたてる効果もあります。
したがって、キーワードさえあれば、通常はそれ以上、興味をかきたてる必要はありません。それひとつで注目と興味、両方の要素を満たすことができるからです。
ただし、場合によってはそれだけでは不十分なこともあるでしょう。
そこで必要とされるのが、「Interest(興味)」の要素です。
といってもこれはキーワードのように特定の言葉をさすものではありません。言葉ではなくその言い回しです。いわゆるレトリックです。
要するにキーワードを下敷きに、そこにレトリックを加えることによってキーワードの中にある「興味」の要素を増幅させる「テクニック」ということです。
じつをいうと、いわゆる「キャッチコピーのテクニック」というのは、これらをさします。すなわち世にいうキャッチコピーのテクニックというのは、基本的に「興味」をかきたてることを第一の目的としたテクニックなのです。
厳密にいうと、「興味(Interest)」だけでなく「欲求(Desire)」「確信(Conviction)」「行動(Action)」を促すことを目的としたテクニックもあるよ(とくに単体キャッチコピーの場合)。
そうしたテクニックについては、のちほど触れますが、ここではそのひとつである「自分ごと化」というテクニックを参考までに紹介しておきます。
これは20世紀はじめの米国で活躍した有名なコピーライター、J・ケープルスの言葉です。
しかして、そのキャッチコピーとは?
もちろん、個別に読者の本名を入れるわけにいかない以上、現実には使えないものですが、これは「自分ごと化」させるにはどうしたらよいかを示唆した原理原則的なテクニックといえるでしょう。
キャッチコピーの公式
さて、ここまで整理すると、勘のよい人であれば、こんな公式が頭の中に浮かび上がってくるのではないでしょうか?
そうです。
という公式です。
ここでキーワードは、「気になる言葉」です。Interest(興味)は、興味をかきたてるテクニック(レトリック)です。
理解しやすいよう、具体例を挙げてみます。
たとえば、こんなキャッチコピーです。
一週間で痩せた! その秘密は?
ここでは「痩せた」がキーワードに、「その秘密は?」が「Interest」(興味)」の役目を担っています。
ここで「+」でなく「✕」を使っているのは、キーワードに単純に「Interest」の要素を追加するのではなく、それによってキーワードの力を何倍にも増幅させるという意味を持たせたかったからです。つまりここで行うのは、足し算ではなく、掛け算だということです。
一見、拍子抜けするほどシンプルな公式ですが、これを使えば、そこそこ効果的なキャッチコピーが誰にでも作れるようになります。
もちろん型にはまった公式ですから、天才的な発想が入り込む余地は少ないかもしれません。けれど、この公式によって少なくとも外さないキャッチコピーが作れることは、これまでの説明からもご理解いただけるのではないでしょうか。
ここでは、この公式を使って各パーツにおけるキャッチコピーの作り方を解説します。
セールスレターの分析
次からはいよいよ具体的なキャッチコピーの作り方について解説していきます。しかし、その前にキャッチコピーにはどんな種類があるかを知るためにセールスレターの構成を分析してみましょう。
セールレターの典型はランディングページですので、ここではランディングページを例に取ります。
分析ツールは、例のAIDCAです。
ランディングページのセールスレターをAIDCAに当てはめると次のようになります。
Attention(注目)・Interest(興味) = セールスレターへ誘導する部分(バナー広告など)
Desire(欲求)・Conviction(確信) ・Action(行動促進)= セールスレター本体
ここからは、セールスレターの本体がDesire・Conviction ・Actionに対応するのがわかります。
さらにセールスレター本体は通常、次のようなパートに分かれます。
ヘッドコピー
ボディコピー(欲求コピー )
ボディコピー(確信コピー)
クロージングコピー(行動促進コピー)
セールスレターの場合、「行動促進」に対応するボディコピーをクロージングコピーと呼んで、別扱いすることが多いよ
また「欲求喚起コピー 」「確信コピー」「クロージングコピー」にはそれぞれ本文を読ませるためのキャッチコピーが使用されることがあります。
したがって、セールスコピーのキャッチコピーを作るといった場合、それらのキャッチコピーをそれぞれ書き分ける必要があります。
ここでちょっと補足しておくと、これら各パートにおけるキャッチコピーはじつをいえばなくてもかまわないものです。
というのも、最初の誘導広告の段階で読者の中には、すでに「本文を読みたい」「読んで詳しい情報が知りたい」という欲求がすでに生まれているからです。
つまり、その時点で読者の多くはすでにセールスレター本文を読みたいというモチベーションに突き動かされているわけで、原理的にいえばあとは放っておいても最後まで読み進めてくれるはずだからです。
とはいえ実際には途中で興味を失って離脱する人もいますので、そうならないよう要所要所で繋ぎ止める必要があります。それが、セールスレターの各パートにおけるキャッチコピーの基本的な役目だと考えてよいでしょう。
各パーツにおけるキャッチコピーの作り方
さて、ここからはいよいよ各パーツにおけるキャチコピーの具体的な作り方の説明に入ります。
最初は、誘導広告のキャッチコピーです。
誘導広告のキャッチコピーの書き方
誘導広告というのは、セールスコピーへ読者を誘導するための広告です。通常、ランディングページを訪れる前のページにあるバナー広告の文言やリンクテキストがそれに相当します。
誘導広告のキャッチコピーというのは、その誘導広告で使われるキャッチコピーです。
この誘導キャッチコピーですが、どうやって作ったらよいのでしょうか?
例の公式を使って考えてみましょう。
キャッチコピーの公式は
でしたね。
では、ここでのキーワードにはどんなものがくるのでしょうか?
ここで誘導キャッチコピーの目的を思い出してください。その目的は何だったでしょうか?
そうです。セールスレター本文を読ませることです。
ではセールスレターには何が書いてあるのでしょうか?
商品の説明?
その通りです。しかし、それを読者の視点に直すと‥?
それによって自分の悩みや課題が解決できるかどうか、です。つまり、読者のそこでの最大の関心事は、悩みが解決できるかどうか、にあります。
ということは?
悩みや課題にまつわるキーワードがそこにくるべき、ということになります。
ちなみに、この場合のキーワードは先に述べた「インサイト」に相当するものです。そして先ほどもいったようにこのインサイトはマーケティング戦略においてキモとなる部分です。したがってここをはずすとすべてが的はずれになってしまいますので十分注意してください。
そのため、ここではしっかりと照準を定めるとともに的を射たキーワードを持ってくるよう最大限の努力を払いましょう。
的を射たキーワード(インサイト)を持ってくるには? →こちらをご参照ください!
また、「Interest(興味)」の部分ですが、ここで使えるテクニックには以下のようなものがあります。
自分ごと化
キャッチコピーの基本は「自分ごと化」にあります。いくらよい商品であっても自分と無関係なものには興味をもってもらえないからです。
その意味で、この「自分ごと化」というテクニックはキャッチコピーがキャッチコピーであるために欠かせない必須要素といえるでしょう。
なお、「自分ごと化」させるテクニックの裏にあるのは、心理学でいうカクテルパーティ効果です。カクテルパーティ効果というのは、パーティのような騒がしい席でも自分が興味ある会話はしっかりと耳に入る現象のことをいいます。
呼びかけ
自分ごと化させる上では、ターゲットに直接呼びかけるのも効果的です。
たとえば「痩せたいあなたに」「転職しようか悩む新卒3年目のあなたに」などと、アピールする相手を限定する手法がそれです。そうすることで、その話題が自分に関係するものであると認識してもらえるようになります。
共感
興味を引くテクニックには「共感」という手法もあります。「そうそう、その通り。いいこと言ってくれるじゃないの」と共感できる話題には読む者の心を引き寄せる効果があります。
しかも共感には、発信者(ここでは広告主)に対する親近感を高めると同時に警戒感を解除する効果もあります。そのため、とりわけコンプレックス系の商品などでは、見込み客の警戒心を解くために、この「共感」キャッチコピーがよく使われます。
例:どうしても○○できないあなたへ
悩み・不安
悩みや不安を取り上げるのも興味を引く上で効果的です。これは先ほど述べた「キーワード」の応用といえるでしょう。
ただし、不快感がまさるとそれ以上読むのを拒否されてしまうおそれがありますので、必要以上にネガティブな表現にならないようくれぐれも注意してください。
夢・希望
人にはそれぞれ夢や希望があります。そのため、自分の夢や希望に関連する話題には自然に興味を引かれるものです。それら夢や希望を前面に打ち出すのがこの手法です。これも「キーワード」の応用例のひとつといえるでしょう。
謎
人は目の前に謎を出されるとその秘密を知りたくなるものです。それは過酷な自然環境の中で不測の事態から身を守る必要性から生まれた本能であるのかもしれません。そうした心のメカニズムを活用するのがこのテクニックです。具体的には次のような手法があります。
言い切らない
最後まで言い切らないで結論を棚上げする手法です。棚上げすることで結論が「謎」として残り、そこに結論を知りたいという気持ちが湧き上がります。
秘密の○○
こういう言い方をされると、気になりますよね? 「秘密って何?」とそこに謎が生まれるからです。そうして、気になってしかたのない人はそれを解消するために謎解きの旅に出ることになります。
これら謎を残すというテクニックはツァイガルニック効果という名前で知られる心理的メカニズムの応用です。
禁止
なにかを制限することも効果的な場合があります。とくに一部の人以外の行動を制限したり、禁止したりすることは、その一部の人たちの興味を強くかきたてる効果があります。たとえば、「〜に興味のある人以外、読まないでください」といった言い回しがそれに当たります。これはカリギュラ効果と呼ばれるものです。
逆張り
あえて常識とは逆をいうことも興味を引く上で効果的な場合があります。たとえば、「一日三食きちんと食べるダイエット!?」といった逆説的な言い回しがそれに当たります。といっても、根拠がなければただの誇大広告になってしまいますので、当然ながらこのテクニックを使えるケースは限られてくるでしょう。
意外性
意外なこと、常識に反することは、それだけで興味をかきたてます。したがって意外性のあるキャッチコピーはそれだけで興味を喚起できるといえるでしょう。
しかし、なぜ意外なことが興味を喚起するのでしょうか? それは認知的不協和という心理学用語で説明できるかもしれません。認知的不協和というのは、自身が認知している事実とは異なる事実を提示された場合、そこに生じる矛盾を解消しようとする心理的傾向のことをいいます。
たとえば、意外なことに接すると心の中に認知的不協和が発生します。そうすると、それを解消しようとして、心が働き出すことになります。その心の働きが「もっと深く知りたい」という「興味」となって現れてくるというわけです。
欲望
当然のことですが、人には欲望があります。そして人はその欲望の対象に多大な興味をもつものです。
その欲望にストレートにアプローチするのがこの手法です。具体的には、欲望の対象となるもの(言葉)をキャッチコピー内に織り込むやりかたがそれに相当するでしょう。
これは人間の本能に訴えるやり方ですのでその効果は絶大です。そのため極端な話、興味を引くだけなら下ネタでも十分用をなすことになります。
しかし商品と直接関係のない題材でいたずらに耳目をそば立たせるのはおすすめしません。いわゆるタイトル詐欺としてかえってブランドイメージを損なってしまうからです。
ニュース性
ニュース、すなわち新奇性のある情報には人の興味をかきたてる効果があります。これも生存本能からくるものだと思いますが、人は環境の変化にはきわめて敏感です。いち早く察知しないと命の危険にかかわる可能性があるからです。そのため、人はニュースなどの新奇性のある情報には無意識ながらも常にアンテナを張っているものです。これはそうした人間心理を活用したテクニックです。
例:○○○を解決する新しい方法
例:米国で人気のあの商品がついに日本上陸!
なお、こうした「Interest(興味)」のテクニックは、以下で紹介するように他にも数多くあります。そして、誘導キャッチコピーにおいては一般に上記だけでなく、それらすべてを使うことができます。
ヘッドコピーの作り方
ヘッドコピーは、セールスレターの一番最初に出てくるキャッチコピーをさします。
図で示すと
ここの部分です。
さて、このヘッドコピーですが、どう作ったらよいのでしょうか?
ここもやり方は同じです。例の公式を使います。
では、ここでのキーワードにはどんなものを持ってきたらよいのでしょうか?
ここでヘッドコピーの目的を思い出してください。その目的は何だったでしょうか?
そうです。セールスレター本文を読ませることです。
え‥? でもそれだと、誘導キャッチコピーと同じでは?
そう思った方、ピンポーン、正解です!
じつをいえば、このヘッドコピーは必須というわけではありません。誘導キャッチコピーで十分に「注目」と「興味」を集めたのであれば、何もヘッドコピーなどなくてもそのままセールスレターを読んでくれるはずだからです。
しかし、実際にはやはりあった方がよいでしょう。前のページの誘導広告とセールスレターとの間にはクリックによる時間的、および意識的な断絶があるからです。その断絶を埋めるためにも、ここはやはりあった方がしっくりきます。
といっても、誘導キャッチコピーと同じでは芸がありません。それに読者の心理的立ち位置からしても誘導キャッチコピーの段階とは若干ですが、違いがありますから、それも考慮すべきでしょう。
どういう違いでしょうか?
それは、セールスレターが気になる(気になるから読んでみたい)という気持ちだけでなく、そこには(自身の課題を解決するための)どんな解決策が書いてあるのか、その具体的なところを知りたいという欲求が強く芽生えていることです。
したがって、ヘッドコピーにおいては、そうした具体的な解決策のヒントを提示するのがよいでしょう。
そして、そのためのキーワードとしては、やはりベネフィットをもってくるのが一番適切でしょう。
ベネフィットというのは、商品が提供する解決策のことだよ。商品がもつメリットが消費者に働きかけた結果生じるよりよい未来とでもいえばいいかな‥
そのキーワードを補強する「Interest(興味)」の部分ですが、ここには以下のようなテクニックがあります。
欲求
先に挙げた「欲望」と基本的に同じですが、ここではたんに商品への興味を引くことではなく、「欲しい」と思ってもらうことに重点が置かれます。といっても、具体的には「欲望」と同様、対象となるもの(言葉)をキャッチコピー内に織り込む手法が基本になるでしょう。
使用後の幸福感
欲求を喚起するコピーに不可欠なのが、使用後の幸福感です。これはその商品を使用することでどんな幸せな生活が得られるかを具体的にイメージさせる手法です。
よくコピーライティングにおいてはメリットではなくベネフィットを示せ、といわれますが、ここでいうベネフィットは使用後の幸福感とほぼ同じ意味です。すなわち、メリットがもたらす幸福感がベネフィットであるといえるでしょう。
シズル感
シズル感のある表現も欲求をかきたてる上で効果があります。シズル感というのは、肉を焼く時の「ジュージュー」いう音を意味する言葉ですが、幅広い意味では刺激的で臨場感のある感覚のことをさします。たとえば「ぐつぐつ」「とろとろ」「ひんやり」「さっぱり」「ズズッと」「ぴったり」「つやつや」などの言葉(とくにオノマトペ)には感覚に強く訴える力がありますが、そうした力を借りるのがこのテクニックです。
誇り
誇りが欲求を喚起する場合もあります。たとえば、普段は手が出ない高級ブランドを無理して購入する背景には、「自分を誇示したい」という心理が隠れていることが少なくありません。こうした自己顕示欲を刺激するのがこのテクニックです。
具体的には、「となりのクルマが小さく見えま~す!」などがその典型例です。なおこれはヴェブレン効果という名称でも知られるテクニックです。
感情
感情に訴えるのも人の心を動かす上で効果的です。広告ではありませんが、泣き落としなどはその典型的な手法といえるでしょう。情に訴えることはそれだけ効果的だということです。
また感情をかきたてる上ではストーリーを提示するのも効果的です。ストーリーには感情をゆさぶる力があるからです。
たとえば「生み出すのに10年かかったスープ」といったフレーズは、それだけで読む者の心の中に様々なストーリーと感情を喚起するのではないでしょうか?
強調
強調は、キャッチコピーの力を強める一番手取り早い方法です。たとえば「なんと!」「びっくり!」といった強調表現はそれだけで商品の価値を強く印象づけることができます。ただし、それらの多くはすでに手垢がついていますので、凡庸な言い回しではあまり効果は期待できないでしょう。あくまで他に策がない時の補助的な手法にとどめるべきです。
虎の威
キャッチコピーの力を強めるには、虎の威というテクニックも有効です。たとえば「京都で受け継がれてきた伝統の〜」とか「シリコンバレーが注目」といった表現がそれにあたります。要は、他のブランドの力を借りて自社ブランドの力をかさ上げするテクニックです。ちょっとズルい手法ですが、うまく使えばそれなりの効果が見込めます。
私が主人公
企業からのメッセージであるコピーの主語は通常、企業になりますが、これを消費者に変えてみるのもよい手法です。たとえば「あなたにご褒美」というより「わたしにご褒美」といった方が当事者感が強くなり、心も動きやすくなるのがおわかりいただけるのではないでしょうか。
希少性
欲求を喚起する上では、希少性をアピールするのも効果的です。とくに「ここでしか手に入らない」もしくは「数量限定」の商品に対してはかえって「欲しい!」という気持ちが高まるものです。これは、スノッブ効果と呼ばれ、背景にあるのは人と違うことに価値を見出す心理です。
欲求喚起キャッチコピーの作り方
欲求喚起キャッチコピーは、欲求喚起コピー本文へ誘導するためのキャッチコピーです。
図で示すと
ここの部分です。
しかし、ご覧のようにここはヘッドコピーとほとんど重なる位置にあります。
そのため、通常はヘッドコピーが欲求喚起コピーを兼ねるケースが多く、特別な場合を除いて、欲求喚起コピーを別に作る必要はありません。
あえて作る場合は、同じキーワードを訴求するにしてもヘッドコピーとかぶらないよう、より具体的な表現にしたり、別のベネフィットをキーワードにしたりといった工夫が必要になります。
欲求喚起コピー本文の作り方はこちら→セールスレターの書き方
確信キャッチコピー
確信キャッチコピーは、確信コピー本文へ誘導するためのキャッチコピーです。
図で示すと
この部分です。
この確信キャッチコピーの作り方ですが、ここもやり方は同じです。やはり以下の公式を使います。
さて、ここでのキーワードにはどんなものを持ってきたらよいのでしょうか?
ここで確信キャッチコピーの目的を思い出してください。その目的は何だったでしょうか?
そうです。確信コピー本文を読ませることです。
では確信コピーには何が書いてあるのでしょうか?
「この商品と販売主が信頼に足ることを示す」情報です。
確信コピー本文の書き方についてはこちら→セールスレターの書き方
ということは?
そうした信頼性を示すキーワードがそこにくるべき、ということになります。
ただし、ここではそこまで厳密に公式にこだわる必要はないでしょう。場合によっては確信コピーに書いてあることのたんなるまとめでもかまいません。というのも、ここまでくれば、下手なレトリックより事実そのものが一番興味をかきたてる要素になるからです。
またここでの「Interest(興味)」については、以下のようなテクニックが使えます。
売れてます
購入者の多くは売れているモノを選ぶ傾向があります。売れていることはそれだけ品質がよい証拠であり、間違いない買い物だと確信が持てるからです。
また人には流行りに乗り遅れまいとする気持ちがあります。そのため、大勢の人が選んでいるというだけで、同じものを選んでしまう傾向もあります(バンドワゴン効果)。
これはそれらの心理を利用した手法であり、次の「お墨付き」とともに「社会的証明」と呼ばれるテクニックのひとつです。
お墨付き
お墨付きという手法も社会的証明のひとつです。人はその本性として権威ある人やものに対しては疑うことなく信じてしまう傾向があります。そうした心理を活用するのがこのお墨付きという手法です。
具体的には「〜教授も推薦」「トクホ認証」といった方法が一般的ですが、そこまで高い権威がなくても「店長オススメ」「○○歴○○年の私が選ぶ○○」といった方法でも一定の効果が見込まれます。
数字
数字には特別な力があります。数字を出すだけでどういうわけか、その信憑性が高くなってしまうのです。おそらくは数字を出すことで、それが厳密な科学的証明に基づいているというイメージを醸し出せるからかもしれません。理由はどうあれ、そうした数字がもつ特別な力を利用するのがこの手法です。
例:顧客満足度96%!
クロージングキャッチコピー
クロージングキャッチコピーは、クロージングコピー本文へ誘導するためのキャッチコピーです。
といいたいところですが、実際のところ、クロージングコピーといってもまとまった本文がある場合は稀で、通常は単体として独立したキャッチコピーが注文フォーム周りにいくつか散りばめられているだけのケースがほとんどです。
いわゆる「マイクロコピー」と呼ばれるものがそれにあたるよ。
したがって、ここではキーワード云々とは無関係に、以下のテクニックをもとにそのままキャッチコピーの形に仕上げるだけでよいでしょう。
クロージングキャッチコピーに使えるテクニックとしては、次のようなものがあります。
限定
数を限定することで今すぐ購入しないと手に入らないことをアピールする手法です。「在庫は残りわずか」と強調することなどがそれにあたります。「需要喚起」のテクニックのひとつである「希少性」とも似ていますが、こちらは「今買わないと永久に手に入れられないかもしれない」と損得勘定に訴えるものであり、他人と違うものを欲しがるスノッブ効果による「希少性」とは本質的に異なります。
おまけ
行動を促すには、「おまけ」を提供するのも効果的です。今ならこんなお得なものもついてきますよとアピールすることで購入を後押しできるからです。これは、とくに判断に迷っている人に対して効果的なテクニックです。
割引
購入のハードルを下げる上で一番手取り早いのは値段を下げる方法です。「通常価格より20%OFF」といった表現がこれに当たります。
保証
保証をつけるのも購入のハードルを下げる上で効果的です。「無料サポート付き」「返金可」といった表現がそれに当たります。
簡単
簡単さをアピールするのもよい方法です。人というのは面倒なもの、複雑なものはどうしても敬遠してしまうもの。一見、面倒くさそうだけど、実際はそれほど難しくないのであれば、「カンタン」のひと言を加えてみてはどうでしょうか。それだけで反応は大きく違ってくるはずです。
非日常
日常とは異なる体験であることをアピールするテクニックです。「今日は誕生日だから特別な日」「大きな仕事を終えた私にご褒美」などがそれに当たります。「今日だけは特別。だから‥」と財布のヒモをゆるめる口実を与えるテクニックといってもよいでしょう。
テクニックの選び方
ここで紹介したキャッチコピーのテクニックを使う際に問題になるのは、どれを選べばよいのか、ということでしょう。
基本的には、どれを選んでもかまいません。といっても、もちろん、使えるものであれば、という条件付きではありますが‥。
では、「使えるものであれば」とは一体どんな条件なのでしょうか?
それはキャッチコピーで謳っていることとボデイコピーの内容に整合性がある、という条件です。当然ながら、もしそうでなければキャチコピーとボデイコピーが論理的につながらなくなってしまうからです。
たとえば、「顧客満足度96%!」といった表現をキャッチコピーに使った場合、あとに続くボディコピーにはそれを受けた話題が必ず織り込まれていなければなりません。
「顧客満足度96%!」という表現をみた読者は「なかなかいい数字じゃないか! だけどその具体的な中身と根拠は?」と興味を惹かれてボディコピーを読み進めるのが普通です。
なのに、それに関する説明がまったく出てこなかったとしたら、読者は肩透かしをくらったような気持ちになってしまうでしょう。そうならないためにも、あとに続くボディコピーは、必ずキャッチコピーを受けた内容にしなければならないのです。
逆にキャッチコピーとボディコピーが論理的につながるかぎり、基本的にはどのテクニックを使ってもかまいません。
もちろん、商品イメージ、ターゲットの種類、戦略目標など他にも考慮すべき要因はさまざまありますので、それらと矛盾しないかぎり、という話にはなりますが‥。
セールスキャッチコピーとそのテクニックについては、別の視点からまとめた記事があります→セールスキャッチコピーをパワーアップする表現テクニック32選
まとめ
本記事では、セールスレターにおけるキャッチコピーの作り方を、独自の「公式」をもとに解説してみました。
キャッチコピーについては、一般にすぐれた勘と長年の経験がなければ作れない、あるいは特殊な才能をもつ人にしかできない特別な能力と思われている節があります。
けれど実際にはもちろん、そんなことはありません。
それは勘でも経験でもなく、たんなる技術です。
少なくとも私はそう考えていますし、ここで私がもっとも伝えたかったのもそのことです。
つまり、その技術さえ学べば、天才的なそれは無理としても、合格点のあげられるキャッチコピーが誰にでも作れるようになりますよ、ということです。
さらにいえば、いまのキャッチコピーに必要なのはいたずらに神秘のヴェールの後ろに安住するのではなく、そこにある技術や理論に対しもっと科学的な光を当てること、そしてそれによってひとつの社会工学としての地位を獲得すること、ではないかと私はひそかに考えています。
またそうすることで、ややもすると胡散臭さがつきまとう現在のキャッチコピーおよびコピーライティングというものに対する世の中の見方がもう少しよい方向へ変わってくるのではないかという期待もあります。
この記事がそれを促進するために少しでも役に立つならば、そしてもしも実際にそうなったとしたならば‥それはまさに筆者冥利に尽きるというものです。
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。
それがそうでもないのです