コピーライティングに興味のある方、学んでみたいという方は少なくありません。
けれど‥。
キャッチコピー、キャッチフレーズ、ボディコピー、イメージコピー、セールスコピー、セールスレター等々ーー。
一口にコピーといっても様々なものがありすぎて、初心者の方は混乱してしまうのではないでしょうか?
そこでこの記事ではコピーとは何か、どんな種類があるのか、というテーマでそのあたりを詳しく説明するとともに、わかりやすく整理してみました。
コピーライティングとは?
まず順序としてコピーライティングとは何か、からみていきましょう。
コピーは通常、広告などマーケティングの世界で使われる宣伝用の文言です。しかし最近ではビジネス分野にとどまらず、政治をふくむ幅広い分野で使われるようになっています。
それもあってか、一般には何かを伝えたいという強い意志をもったメッセージ=コピーとして捉えられているようです。
このように元々の意味が広がっていることもあり、コピーという言葉を定義づけるのは簡単ではないのですが、ここではシンプルさを優先して「ある目的を達成するため戦略的に練られた文言」ということにしたいと思います。
コピー=ある目的を達成するため戦略的に練られた文言
目的を達成するという意味では「何らかの課題を解決する手段となる言葉」と言い換えてもよいでしょう。
忘れてならないのはコンセプトがそうであるように、コピーもまた「課題を解決するための手段」だということだね。
コピーライティングの形式
コピーには一定の形式があり、それは通常、次のふたつの部分から構成されます。
キャッチコピーとボディコピーです。
キャッチコピーは一般に目立つように大きな文字で表示されている比較的短い文言です。その名の通り、読者の目を惹くことを目的としており、そのため「惹句」と呼ばれることもあります。
それに対して、ボディコピーは比較的長い文章からなり、通常訴えたい内容を詳細に説明するために使われます。
両者にはそれぞれ次のような役割があります。
キャッチコピー→読者の興味を惹き、ボディコピーへ誘導する
ボディコピー→伝えたいことを説明する。また目標とする行動変容を促す。
このように、コピーといった場合、キャッチコピーとボディコピーがワンセットとして組み合わされ、それぞれ役割を分担しているのが本来のありかたです。
ただし、最近ではキャッチコピー単体で両者の役割を担うようなケースも増えています。時間に追われる人が増え、ボディコピーまで読んでもらえることが少なくなったことが要因かもしれません。
でもキャッチコピーだけで購買を促せるのは通常、品質面で大差のない商品、いわゆるコモディティ商品にかぎられるよ。
背景にある理論は?
コピーライティングを理解する上では、その背景にある理論を知るとその本質がより理解しやすくなります。
コピーライティングの背景にある理論には次のようなものがあります。
AIDMAとは?
AIDMAは消費者の意思決定を説明する購買プロセスモデルで、1920年代にアメリカの実務家、サミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱されたといわれています。
それによれば、消費者はまず商品を認知し (Attention)、興味を抱き (Interest)、ついで欲しいという欲求が喚起され (Desire)、さらにそれを記憶し (Memory)、最終的に購入に踏み切る(Action)とされています。
なおMemoryの代わりにConviction(確信)がくることもあります。
AIDMAの観点からみたコピー
前節で、キャッチコピーとボディコピーはそれぞれ役割分担しているといいましたが、そのことはこのAIDMAという観点からみるとより理解しやすくなります。
以下は、キャッチコピーおよびボディコピーが、それぞれAIDMA(ここではAIDCA)のどの部分に対応しているのかを示したものです。
キャッチコピー→Attention(注目)とInterest(興味)→注目を引き、興味を抱かせる
ボディコピー→Desire(欲求)とConviction(確信)とAction(購買行動)→欲求を喚起し、購入するに値すると確信を抱かせ、購買を促す
ここからも、キャッチコピーが「読者の興味を惹き、ボディコピーへ誘導する」役割を、そしてボディコピーが「伝えたいことを説明し、目標とする行動変容を促す」役割をそれぞれ担っていることが理解できるかと思います。
DAGMARとは?
DAGMARは、広告効果を測定する手法のひとつです。「広告効果測定のための広告目標設定」を意味する「Defining Advertising Goals for Measured Advertising Results」の頭文字を取って作られた造語で、ラッセル・H・コーリーが1961年、全米広告主協会へのレポート内で提唱したといわれています。
それまで企業の広告活動は、直接的な効果測定が難しいということもあり、計画的に行われていたとは言い難い状況にありました。そうした状況にくさびを打ち、より計画的な広告活動を行うよう促すきっかけとなったのが、このDAGMAR理論です。
DAGMAR理論では、広告が達成すべき目標として次のような指標を掲げています。
知名
ブランド名を知ってもらうことです。知るだけでなく記憶してもらうことも含む場合があります。
理解
ブランドがどういうものかを理解してもらうことです。知名を達成した次の目標といえるでしょう。
好意
ブランドに対して好意をもってもらうことです。いくら商品がよいものであると理解したとしても嫌われてしまっては販売に結びつかないからです。
行動
実際に行動に移してもらうことです。行動は通常、購買が指標になりますが、webサイトなどではクリックが指標になることもあります。
DAGMARの観点からみたコピー
さきほどAIDMAの視点からコピーを分類しましたが、同様にDAGMARの視点からも分類することができます。
次節で詳述しますが、機能面としてのコピーには次の三種類があります。
これらはDAGMARの視点からみるとそれぞれ次のように分類できます。
※厳密には「知名」や「記憶」を目的としたコピーはイメージコピーとはみなされない傾向があります。その代わり、たんにキャッチコピーと呼ぶ場合が多いようです。
このように世に数多あるコピーは、その多くが目的という視点から上のどれかに分類・整理することができます。
今のマス広告は多くが「好意」獲得を目的としたものだよ。そのためそこで使われるコピーはほぼイメージコピーといっていいかもね。
コピーにはどんな種類があるの?
さて、ここからがいよいよ本題です。
コピーにはどんな種類があり、それぞれどう違うのでしょうか?
ここでは形式面と機能面からいくつかに分類した上でそれぞれに解説を加えてみました。
形式面からみたコピー
前にも触れたように形式面から分類するとコピーは次の二つに分けられます。
キャッチコピー
キャッチコピーは一般に目立つように大きな文字で表示されている比較的短い言葉です。その名の通り、読者の目を惹くことを目的としており、通常、ボディコピーと対になって使われます。キャッチフレーズという言い方をすることもあります。
AIDMAの観点からいうと、Attention(注目)とInterest(興味)に対応します。すなわち、注目を集め、興味を抱かせ、そうすることでボディコピーを読むよう誘導するのがその目的です。
ただし、正確にはAttention(注目)を担うのは通常、イラストや写真などのビジュアル部分であり、文字としてのキャッチコピーはInterest(興味)を担うことが多いようです。
そのため、厳密にいえば、キャッチコピーが対応するのは、Interest(興味)だといえるでしょう。
またそうである以上、その内容は原則として興味を引くものであればなんでもよいということになります。
そのため、なかには「?」マークひとつでキャッチコピーの役割を果たす場合もあります。
とはいえ、キャッチコピーはあくまでもボディコピーと連動して、その最終目的を果たすのが役割です。したがって、実際には「たんに興味を引くもの」であればなんでもよいというわけにはいきません。当然ながらそこにはAIDMAの最終的な目標であるAction(購買)につなげるための工夫が必要になってきます。
ボディコピー
ボディコピーは比較的長い文章からなり、通常、訴えたい内容を詳細に説明するために使われます。
AIDMA(AIDCA)の観点からいうと、Desire(欲求)とConviction(確信)、Action(購買)に対応します。すなわち、欲求を喚起し、確信を抱かせ、最終的に購買行動へと導くことがその役割となります。
要するに「販売」を目的とした文章です。
その意味で、ボディコピーはセールスコピーそのものであるといってもよいでしょう。
機能面からみたコピー
また機能面からみるとコピーは次の三つに分けられます。
イメージコピー
イメージコピーは企業や商品のイメージアップを目的としたコピーです。ブランドイメージ向上のためのコピー、すなわちブランディングコピーの一種といってもよいでしょう。
DAGMAR理論の観点からいうと、「好意」獲得を目的としたコピーととらえることができます。
イメージコピーといった場合、形式の面からはキャッチコピーとボディコピーの両方を意味するのですが、通常はキャッチコピー単体をさしていうことが多いようです。
love me系のコピーという捉え方もあるよ→広告コピーとは? セールスコピーとの違いから知るその本質と目的
なお商品名を連呼することで記憶に焼きつかせることーつまり「知名」を目的としたコピーもありますが、それはたんにキャッチコピーと呼ばれることが多く、通常、イメージコピーとはみなされないようです。
イメージコピーはあくまで「印象をよくする」ための、「ちょっとおしゃれ」なコピーというのが一般的な捉え方のようだね。
また「理解」を目的としたコピーも一応、イメージコピーの範疇に入れてよいかと思いますが、その場合、タグライン(次節で取り上げます)との区別がつけにくくなることが多いようです。
たとえば、こんなコピーです。
10秒チャージ
ウイダーインゼリー
これなどは、スピード感のある「刺さる」イメージコピーとしても、またブランドの価値を端的に示すタグラインとしても、どちらでも使えそうですよね。
さらにDAGMARの指標にはありませんが、「需要喚起」を目的としたイメージコピーもあります。下はその一例です。
通りすがりの他人ほど、好奇心旺盛である。
立川ブラインド
ここにあるのは、外から覗かれることに警告を発することでブラインドへの需要を喚起する、という仕掛けです。
ただし、こうした需要喚起型コピーは原則として市場を牽引するリーダー企業にのみ許された特殊なパターンであり、二番手以下の企業は通常、使えないものであることは覚えておくべきでしょう。
無理やりあてはめればだけど、「需要喚起」はDAGAMRでいう「行動」に含まれるとみなしてもよいかもね
イメージコピーの具体例
キミが好きだと言うかわりに、シャッターを押した。
オリンパス商事
10代で口ずさんだ歌を、人は一生、口ずさむ。
ソニー WALKMAN
服は、肌より先に抱きしめられる。
西武百貨店
このままじゃ、私、可愛いだけだ。
朝日新聞社
地図に残る仕事
大成建設
一目で義理とわかるチョコ
ブラックサンダー
人口は七十万、神様は八百万。
島根県
卒業って、出会いだ。
リクルート
参考:僕らは言葉でできている
セールスコピー
セールスコピーはその名の通り、販売を目的としたコピーです。もともとコピーは商品を売るためのものですので、その意味ではコピーの原点といえるかもしれません。
DAGMARの観点からは、「行動」促進を目的とするコピーとしてとらえられます。
形式の面からは、キャッチコピー単体をもってセールスコピーと称することは少なく、通常はボディコピー、さらにクロージングコピーと呼ばれる最後の後押し部分を担うコピーを含む文言一式を指すことが多いようです。
なぜそうなのかといえば、おそらくキャッチコピー単体で行動を促すのは難しいから、というのが理由だと思われます。
またその性質上、セールスコピーは見込み客に向けた手紙文の形式のものが多く、そのためセールスレターと呼ばれることもあります。
buy me系のコピーという捉え方もあるよ→広告コピーとは? セールスコピーとの違いから知るその本質と目的
セールスコピーの具体例(キャッチコピー部分)
毎日たった1クリックで月に5万円稼げる!
聞き流すだけで英語が話せるようになる!
どうやって私は三ヶ月で10kgの減量に成功したのか?
私がピアノの前に座るとみんなが笑った。でも弾き始めると・・・。
タグライン
タグラインは、企業の理念や商品の価値を伝えるメッセージです。通常、ロゴマークの隣に置かれ、ロゴマークに凝縮された理念を言葉で明示する役割を担っています。
タグラインの目的は、企業や商品が約束する価値ーーブランド価値ーーを消費者に明確に認識してもらうことにあります。
その意味では、ブランドコピーとほぼ同じものと言ってよいかもしれません。
DAGMAR理論でいえば、「理解」を促すコピーととらえることができます。
またタグラインは、キャッチコピーの「オチ」として使用されることもあります。
たとえば、広告に接した際、キャッチコピーだけではいまひとつ意味不明だけれども、タグラインを読んで「あ、そういうことね!」と納得した経験はないでしょうか?
それは、そこにある意味の落差が一瞬でストンと腹落ちするからです。そしてそこに生じる新鮮な驚きが広告効果をより高めることになるのです。
タグラインの具体例
I’m lovin’ it
日本マクドナルド
うまいすしを、 腹一杯。
スシロー
インテル、入ってる
Intel
吸引力の変わらないただ一つの掃除機
ダイソン
やがて、いのちに変わるもの
mizkan
その他
「コピーのようなもの」は他にもあります。ここでは上の範疇に入りきらないものとして次の二つを挙げてみます。
スローガン
スローガンは、集団の理念や運動の目的を覚えやすく簡潔に表現した言葉です。
企業スローガンといった場合、従業員に会社として目指すべき方向を認識してもらうためのキャッチフレーズという意味で使われることが多いようです。
語源が「勝どき」にあることからもわかるように、スローガンにはもともと「ひとつの目的に向けて組織を束ね、導く」という意味があります。
そのため、スローガンは通常、組織内に対して向けられるインナーメッセージとして使われることが多く、基本的に対外向けのアウターメッセージとして使用されることが多いコピーとはその点で本質的に異なるといえるでしょう。
しかし、その違いは結局のところ、内向きか外向きかの違いだけともいえますので、両者には当然ながら似たところも多くあります。
たとえば、
「企業や商品が約束する価値を認識してもらう」ことを従業員向けのメッセージとして具体化させた場合、それはスローガンになりますし、社外向けに明示した場合、それはコピーーーとくにタグラインーーになります。
すなわち両者の関係は
スローガン→インナー向けタグライン
タグライン→アウター向けスローガン
といってもよいかもしれません。
要するに、それらは同じコインを表からみるか裏からみるかの違いでしかないということです。
クレド
クレドは、企業スローガンを従業員の行動指針としてより具体的に落とし込んだものです。
これもスローガン同様、基本的に社内向けの、つまりインナー向けのメッセージです。しかしこれをたとえば、店内に貼り出すなどアウター向けメッセージとして社外の人にも明示した場合、それはある種のコピーとしての機能を果たすことになります。
そうすることで、お客様にもなんらかのメッセージを伝えることになるからです。
まとめ
最後に整理しておきます。
コピーは、ある目的を達成するため戦略的に練られた文言のことです。
形式上、キャッチコピー(キャッチフレーズ)とボディコピーに分かれます。
理論的な背景には、
AIDMA(AIDCA)とDAGMARがあり、それらを通してみると、コピーの役割がよりはっきりと見えてきます。
コピーの種類には以下のものがあります。
形式上の分類
キャッチコピー
ボディコピー
機能上の分類
イメージコピー
企業や商品のイメージアップを目的としたコピーです。
セールスコピー
販売を目的としたコピーです。
タグライン
企業の理念や商品の価値を伝えるメッセージです。
その他
スローガン
従業員に会社として目指すべき方向や理念を認識してもらうためのメッセージです。
クレド
企業スローガンを従業員の行動指針としてより具体的にしたものです。
以上、コピーの定義とその分類についてやや詳しく解説してみました。
もしあなたが今、コピーライティングを学んでいるのであれば、今後、接するコピーひとつひとつに対し、それぞれの違いや目的を意識して見るようにしてみてはいかがでしょうか?
そうすることで、きっとたくさんの学びが得られるはずです。
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。