マーケティングの目的はセールスを不要にすることといわれます。押し付けがましい売り込みをせずとも売れるようになるーーそのための仕掛けがマーケティングだという意味です。
しかしどのようなメカニズムでそれが可能になるのでしょうか?
ひとつには、見込み客のウオンツと商品のベネフィットを一致させることです。ウオンツと商品のベネフィットが完全に一致するというのは、見込み客の脳内マップにその商品がベストポジションとして位置付けられるということです。
こうなった時には、見込み客は瞬時に「それをくれ!」状態になります。そうなればよけいな売り文句は一切不要となります。
これはもちろん、コピーライティングにも当てはまります。すなわちポジショニングさえしっかりできていれば、千言万言を費やさなくとも、また思わせぶりな、いかにもな言い回しや手垢のついたレトリックに頼らずとも、喜んで買ってもらえるということです。中国の賢者・老子の教えになぞらえていえば「無言にして売らざるなし」、といえるでしょう。
もちろん、コピーライティングである以上、当然ながらまったく無言というわけにはいきません。なのでいわずもがなですが、ここでは「必要最小限の言葉で売る」という程度の意味であることは念のため付け加えておきます。
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。