コピーライティングの書き方 | 「刺さるコピー」はこう作れ!

買うツボを刺激するインサイトコピーとは

売れるコピーはインサイトが8割 レトリックが2割

ぶっそうな話で恐縮ですが、コピーライティングをミサイル攻撃にたとえてみたいと思います。空高くバーンと打ち上げて一気に敵陣を破壊するあのミサイルです。

このミサイル攻撃を行う上で大切なことといえばなんでしょうか?

破壊力?

ピンポーン! その通りです。そもそも破壊力のないミサイルなどなんの役にも立ちませんからね。

ところでそれと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なことが、じつはもうひとつあるのですが、おわかりでしょうか?

じらすほどのことでもないので先に答えを言ってしまいますね。照準を定めることです。

当然ですよね。いくら破壊力のあるミサイルでもあさっての方向に飛んで行ってしまっては敵陣を破壊するという当初の目的が達成できないのですから‥。

コピーライティングも同じです。いくら練りに練った素晴らしいコピーであっても、「的」を外したコピーでは読み手の心に刺さることはありません。

もちろんそれでは心を動かすこともできませんし、ましてや買ってもらうことなど夢のまた夢というべきでしょう。しかし、それとは対照的に「的」さえしっかり押さえていれば、特別巧妙なレトリックに頼らなくても読み手の心を動かすことは十分可能になります。

コピーライティングで重要なのはインサイト!

一般にコピーライティングというのは言葉の表現技術、すなわちレトリックがその本質だと考えられています。間違いではないのですが、コピーライティングにおいてレトリックが果たす役割はじつはそれほど大きくありません。

きちんとしたデータがないので正確な数字はわかりませんが、コピーライターとして長年、仕事をしてきた私の感覚からするとそれは2割前後ではないかと思われます。

では残りの8割を占めるのはいったい何でしょうか?

インサイトです。

インサイトというのは、購入を動機づける心理的な働きです。たとえていうと「買う気を刺激するツボ」のようなものです。東洋医学でいうあの「ツボ(経絡)」です。このインサイトというツボさえ押さえれば極端な話、レトリックなどなくても売れるのです。

もうおわかりかと思いますが、先ほどのミサイルのたとえでいえば、「的」に相当するのがこのインサイトです。

すなわち、インサイトというツボを押さえることが、いわゆる「刺さるコピー」を作る秘訣なのです!

⭐︎

この記事は、インサイトという概念をキーワードに見込み客の心を射抜くためのコピーーーここでは「インサイトコピー」と呼んでいますーーの作り方をセミナー形式で解説したものです。

以前開催し、好評をいただいたセミナーで使用したスライド資料をもとに、記事として読みやすいよう新たに加筆修正したものですが、内容的にはほとんど別物といってよいほどパワーアップされています。

小手先のレトリックに頼らない、より骨太のコピーを書けるコピーライターが増えてくれることを頭の中で思い描きながら一気に、そしていそいそと書き上げました。たまたまこの記事にたどり着いてきてくださったあなたがコピーライティングにおけるインサイトの重要性を認識していただき、またそれによってその技術に一層の磨きをかけていたただけたなら、筆者としてこれほど嬉しいことはありません。

この記事が対象とする人

この記事が対象とする人

●コピーライティングの基本原理を学びたい人
●「煽り系コピーライティング」に限界を感じている人
●より効果的なコピーライティングノウハウを知りたい人

 

コピーライティングの書き方 その1 売れるキャッチコピーを作るには?

キャッチコピーを作る上でのポイントはふたつあります。

ひとつはAIDMAの理解です。

もうひとつはインサイトの発見です。

コピーライティングの書き方 その2 インサイトとは?

まずはインサイトから見ていきましょう。

インサイトというのは直訳すると「洞察」を「意味する英語ですが、マーケティングの世界では、一般に「人を動かす隠れた心理」といった意味で使われます。消費者自身も気づいていない無意識の欲求といった意味です。

といってもこれでは雲をつかむような話ですので、ここではもう少しわかりやすく「買う気を刺激するツボ」といっておきましょう。指圧や鍼灸でいうあのツボです。そこを刺激されると思わず買いたくなってしまうーーそんなイメージです。

とはいえそれでもまだ抽象的ですよね。

じつはこのインサイト、実際、やたらと抽象的な概念である上、様々な人が様々な定義をしているので、われわれ現場の人間には何がなんだかわからないのが現実です。

そこでここでは独断と偏見を恐れず実用本位でざっくりといってみましょう。

ということでもう少し判りやすい「たとえ」はないものかと探して見たら‥ありました!

言葉です。

何気なく本を読んでいたり、また街を歩いていたりしているとき、特定の言葉だけがやたら目に入ってきた経験はないでしょうか?

たとえば「痩せる」「儲かる」「腰痛」などの言葉です。

なぜやたら目に入るのでしょうか?

それはそれらの言葉が「気になる言葉」だからです。あなた自身がそれにまつわる悩みを抱えているからです。その悩みを解消したいという欲望が心の中にあり、その欲望がそうした言葉に注目するよう無意識の中で働きかけているのです。

同じように「成功」「億万長者」「美人」といった言葉がやたら目に入る人も多いのではないでしょうか。それはそれらの言葉がもつ世界観が自分もそうなりたいという欲望と共鳴するからです。その世界観に自分を「はめる」ことで心の中のインサイトが刺激されるのです。

このように「気になる言葉」「はまる言葉」には、心のツボを刺激する特別な力があります。

ここではその力に注目して、それらをほぼイコール、インサイトと定義したいと思います。

学問的な正確さという観点からみれば、少々ずれた部分もあるかもしれません。しかしこれはあくまでもコピーライティングという特殊な視点からみた、それもざっくりした定義ですので、少々の逸脱はご容赦いただければと思います。

なお人の心をゆさぶる力を持つという点で、これらの言葉はある種のパワーワードということもできます。そこでここではそれらをパワーワードという名称でも呼ぶことにします。

すなわち、「気になる言葉」「はまる言葉」≒「インサイト」≒「パワーワード」という図式です。

閑話休題

ユング心理学では、人の無意識の中には元型と呼ばれる一種の情動エネルギーがあるといわれています。それがなんらかの形で刺激されるとその情動が一気に噴出し、その人の行動を支配するといわれています。そして元型はすべての人間が共通して持っているものとされています。

たとえば、そのひとつに「英雄」という元型があります。英雄というのは、困難を乗り越えて勝利する人を象徴するイメージです。苦難に打ち勝ち、最終的に夢を実現する物語に誰もが惹かれるのは誰の心の中にもこの「英雄」の元型があるからだとされています。

その点、インサイトはどこか元型と似ているところがあるようですね。というより、もしかしたらもっとも強力なインサイトは元型なのかもしれません‥。

コピーライティングの書き方 その3 AIDMAとコピーライティング

AIDMAは、戦前アメリカの実務者が広告制作のためのヒントとして開発したもので、生活者が商品情報に接してから購買にいたるまでの心理的プロセスを示したものです。マーケティングの世界では購買行動モデルという名称でも知られています。

AIDMA 理論によれば、消費者はまず広告情報や店頭陳列などによって商品を認知し (Attension)、興味を抱き (Interest)、ついで欲しいという欲求が喚起され (Desire)、さらにそれを記憶し (Memory)、最終的に購入に踏み切る(Action)とされています。

なおMemoryの代わりにConviction(確信)がくることもあります。

もともと広告制作用に開発されたことからも判るように、これはコピーライティングのために作られたモデルです。そんなわけで、このAIDMAはいまではプロのコピーライターなら当然知っておくべき常識のひとつとされています。

コピーライティングの書き方 その4 AIDMAで分析するコピーの役割分担

一口にコピーライティングと言ってもいろいろな種類があるのはみなさんもご存知かと思います。

そこにはキャッチコピー、ヘッドライン、タイトル、リードコピー、ボディコピーといった似たような言葉がいくつかあります。

でも、これはそう気にしなくて大丈夫です。じつのところそこには多くの重複があるからです。つまり実際には同じものをたんに別の言葉で呼びならわしているだけなのです。

ここではとりあえずキャッチコピーボディコピーのふたつだけ覚えておいてください。

キャッチコピーというのは、一般に商品名と同じかそれ以上に目立つように配置されている比較的短めのフレーズです。

ボディコピーというのは、一般に商品の詳細を説明した比較的長い文章です。

通常、コピーといった場合、両者を合わせたものを指します。

そして両者にはそれぞれの役割があります。両者が組み合わさり、それぞれの役割を果たすことで「商品を売る」という最終的な目的が達成できるように設計されているのです。

では、それぞれの役割とはいったいなんでしょうか?

次のような役割です。

キャッチコピー=読者の興味を引き、ボディコピーに誘導する

ボディコピー=商品の魅力を伝え、商品を買わせるよう説得する

これはAIDMAに当てはめてみるとより判りやすいでしょう。

ご覧のようにキャッチコピーは「A」「I」に、ボデイコピーは「D」から「A」までに対応することが判ります。

一般にキャッチコピーというと多くのひとはモノを売るための言葉という意味で捉えていますが、正確にいえば間違いです。

キャッチコピーはモノを売るための言葉ではありません。その名の通り、読者の注意を引く(キャッチする)のが本来の役割です。

モノを売る役割を担うのはボディコピーの方です。

ただし、最近はキャッチコピー単体で、売る役割までカバーしたものも増えています。情報の洪水のなかにいる現代人にボディコピーまで読んでもらうのがますます難しくなっていることが背景にあるのかもしれません。

次のコピーなどはその良い例です。

キムチで痩せる

息は ほぼ、顔。

とはいえこうしたキャッチコピーを作るのは容易ではありません。というのも注意を引く、商品の魅力を伝える、さらに購買行動を促す、という複数の目的を短い文の中で同時に遂行する必要があるからです。

しかしこのAIDMAを理解すればそれも不可能ではありません。というより逆にこれを理解しないでそのような一人何役ものキャッチコピーを作ることこそ難しいといえるでしょう。

ともあれ、ここではキャッチコピーとボディコピーが本来別々の役割を持っているということだけ押さえておいてください。

コピーライティングの書き方 その5 キャッチコピーに必要な要素

  前段では、キャッチコピーが読者の「注目を集め、ボディコピーへ誘導する」のがその役目であると述べました。

ではそのために必要なものはなんでしょうか?

これはもうお判りですよね。いうまでもなく「Attention」と「Interest」です。

ではそれを実現するための要素は一体なんでしょうか?

それは「パワーワード」と「謎」です。

パワーワードというのは「気になる言葉」「はまる言葉」でしたね。

「気になる」「はまる」というのはまさに「Attention」そのものです。

したがってパワーワードにAttention機能があることはご理解いただけるかと思います。

では「謎」とはなんでしょうか?

ここではより正確に「謎を残す」ことと言い直しておきましょう。

人は不完全より完全を求めるものです。人の心の中には完璧を求める一種の衝動があります。ものごとを終わりまでやり遂げないと落ち着かないというのもその表れです。それは情報に対しても同じです。

たとえばテレビ番組を観ている最中、いいところで「続きはCMの後で」とやられたらどうでしょうか?

気になりますよね。

じつは興味というのは、まさにそういう場面に発生します。

謎をかけられたとき、それを解こうとして興味が生まれるのです。

このメカニズムを利用したのが「謎を残す」というテクニックです。

ちなみに心理学用語ではザイガニック効果といいます。

具体的な例でみていきましょう。

たとえばこんなキャッチコピーです。

一週間で痩せた! その秘密は?

ここでは「痩せた」がパワーワードとして「Attention」の役目を、「その秘密は?」が「謎」として「Interest」の役目を担っています。

このようにキャッチコピーにおいては、「パワーワード」と「謎」が、欠かせないふたつの重要なポイントとなります。

今度目にするキャッチコピーをよく調べてみてください。ほとんどがこのパターンでできているのが判るはずです。

とくにいわゆる「煽り系キャッチコピー」はワンパターンなものが多いですから、よりわかりやすいかもしれません。

コピーライティングの書き方 その6 ボディコピーに必要な要素

次はボディコピーです。

前段でボディコピーは、商品の魅力を伝え、商品を買わせるよう説得するのが役割であると述べました。

AIDMAでいえば「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の三つに対応することも述べました。

では、このなかでもっとも重要なものはなんでしょうか?

「Desire(欲求)」です。

「欲しい!」と顧客が思わない限りなにもはじまらないわけですから、これはいうまでもないでしょう。

その意味で、「Memory(記憶)」「Action(行動)」のふたつは補足的なものにすぎません。

ではこの「Desire(欲求)」段階で求められる要素とは一体なんでしょうか?

それは「パワーワード」「解決策」です。

パワーワードがインサイト、すなわち「買う気を刺激するツボ」である以上、それが不可欠であることはいうまでもないでしょう。

ただし、それだけでは不十分です。ここではそのツボをさらに刺激して買う気を最大限まで引き出してあげることが必要です。「買う気」が十分高まらないかぎり、「Action(行動)」へ橋渡しすることができないからです。それを担うのが「解決策」です。

ではこの「解決策」には一体どんな内容が入るのでしょうか?

それは、その商品を使うことによってどのように解決に至るのか、その道筋を示す具体的な説明です。

顧客にとってここでの最大の関心事は、その商品が本当に悩みを解決してくれるのか、本当に希望を叶えてくれるのか、またもしできるとしたならその可能性はどのくらいなのかというところに絞られています。

したがって、ここではそれを具体的にわかりやすく説明してあげる必要があります。

それを行うのがこの「解決策」です。

以上、ボディコピーにおいて欠かせない重要ポイントが「パワーワード」とその「解決策」であることがお分かりいただけたかと思います。

コピーライティングの書き方 その7 コピーライティングで一番重要なのはインサイト(パワーワード)

コピーライティングの世界にはこんな言葉があります。

大切なのは「どう言うか」より「何を言うか」であるーー。

ここでいう「何」とは具体的に何を指しているのでしょうか?

ここまで学んできたみなさんはもうお判りですよね。

そうです。「何」というのは「インサイト」のことです。すなわちパワーワード(とそれにまつわる解決策)です。

また「どう」というのは、そのインサイトをどのように表現するか、ということです。すなわちレトリックです。

つまりこの言葉が述べているのは、コピーライティングで大切なのはレトリックよりインサイト(パワーワード)である、ということです。

そのことはコピーライターとしての私のささやかな経験からもいえます。たとえばネット通販の場合、とくに初期段階では何度も表現を変えて反応率の違いを調べるわけですが、その際、いくらレトリックをいじっても反応率が大きく変わることはほとんどありませんでした。大きな違いが出るのはインサイトにかかわる部分を変更したときだけでした。

もちろんきちんとしたデータに基づいた数字ではありませんが、私の印象では販売力に占める貢献度合いは、インサイトが8割、レトリックが2割というところではないかと思います。

コピーライティングの書き方 その8 パワーワード(インサイト)の発見方法

さてこれほど重要なインサイト(パワーワード)ですが、どうしたら発見することができるのでしょうか?

ここまでその重要性を強調しておきながらなんだといわれそうですが、じつは「これが決定版」といえる方法は残念ながらいまのところまだありません。

正直、勘に頼るしかないのが現状です。

もちろんまったくないわけではありません。

代表的なのが市場調査です。これは見込み客にアンケートに答えてもらったり、直接インタビューしたりすることでその心の中を探る手法です。

しかしこれはコストがかかる上、正確なデータが得られるという保証もありません。とくにインサイトのような無意識レベルのものは当の本人でさえ認識していないのが普通です。そのためそれを発見するのはよほど腕のいいリサーチャーであってもきわめて難しいのが現実です。

この件に関してよく引き合いに出されるのがiPhoneです。iPhoneはきちんとした市場調査から生まれたものではありません。スティーブ・ジョブスという天才的なマーケッターがその嗅覚でもって市場の奥底に沈んでいた隠れたインサイトを発見したことから産み出されたものです。

仮に彼が通常の市場調査をもとに開発していたなら、おそらく毒にも薬にもならない凡庸な商品になっていたでしょう。

もっとも最近はそれなりに効果を期待できる新しい手法も出てきています。

近年目にするペルソナやカスタマージャーニーもそのひとつです。もちろん直接インサイトを探るのを目的にした手法もあります。

科学的な方法論にもとづくそれらを活用すれば、インサイトを探る上で一定の助けにはなるでしょう。

しかし、それでもなおそこには一定の限界があります。というのも、それらはすべて売り手側による推測だからです。つまりどこまでいっても憶測の域を出ないということです。

腕のよいコピーライターが求められる理由もじつはそこにあります。腕のよいコピーライターがなぜ求められるのか? それは彼ら彼女らには市場のインサイトを直感的に感知する能力があるからです。

だから的を射たコピーが書けるのです。だから売れるし、クライアントから頼りにもされるのです。

そのことからもわかるように、一般にイメージされているのとは異なり、コピーライターの本質は言葉を操る技術そのものにあるわけではありません。

それは市場と顧客のインサイトを直感的に見抜く洞察力です。

それはある種、神の声を聞くシャーマン(巫女)の能力にも似ています。つまり神の声ならぬ市場の声を聞く巫女、それがコピーライターであるといえるでしょう。

ちょっと横道にそれてしまいました。話を戻しましょう。

では結局のところどうすればよいのでしょうか?

突き放すようですが、最終的には自分で試行錯誤するしかありません。幸い、上記のように新しい方法論も出てきています。なので、まずは関連書籍にあたってみてください。その上でそれらを参考にご自身で工夫してみることをお奨めいたします。

インサイトについてより詳しく知りたい方にオススメの書籍はこちらです↓

ちなみにその際、筆者が現在、開発中(試行錯誤中)の「コンセプト最適化ツール」も参考になるかと思います(小声)。

コピーライティングの書き方 その9 コピーライティングとカスタマージャーニー

またか! と思われるかもしれませんが、ここでもうひとつだけ横文字を出させてください。

前段でも簡単に触れた「カスタマージャーニー」です。

コピーライティングの書き方 その10 カスタマージャーニーとは?

カスタマージャーニーというのは、顧客がニーズを意識してから商品購入にいたるまでのプロセスをジャーニー(旅)にたとえたものです。またその全体像を地図形式で表したものをカスタマージャーニーマップといいます。

どのようなプロセスかは商品によって違いますが、一般には次のような段階に分けられます。

認知→興味・関心→比較検討→行動

「ん? なんかどこかで見たぞ‥」。そう思った方もいらっしゃることでしょう。

そうです。AIDMAです。

AIDMAも顧客の心理的プロセスを段階ごとに示したものです。なので両者は基本的に同じものです。とりわけコピーライティングという観点からみればほぼ同じとみなしてかまいません。

何が違うのか?

AIDMAでは売り手側の目線から顧客をどういう方向に「コントロール」するかに力点が置かれる一方、カスタマージャーニーではインサイトを顧客目線から探ることに力点が置かれます。要は視点の違いです。

コピーライティングの書き方 その11 なぜカスタマージャーニーが重要なのか?

このカスタマージャーニーがなぜそれほど重要なのでしょうか?

それは、顧客がいまどのフェーズにいるのかを明確にしないと的を外した訴求になってしまうからです。

どういうことでしょうか?

インサイトはフェーズによって異なります。そのためフェーズを明確にしないと正しいインサイトはわかりません。そして正しいインサイトがわからないと的を射た訴求もできないということです。

ここでロゴデザインのサービスを売るためのコピーを例にとってみましょう。

そこでは何を訴求すれば一番効果的なのでしょうか?

それはいま述べたようにフェーズごとに異なります。

たとえば顧客がいま認知フェーズにいるとします。すなわち「ロゴデザインを変えようかな」と考え始めた段階にいる場合です。そこでのインサイトは一体何でしょうか?

インサイトの項で説明したように「気になること(言葉)」「ハマルこと(言葉)」に置き換えて考えてみてください。

予想はおおよそついたのではないでしょうか?

そうです。

「ロゴデザインを変えるメリット」です。

変えた方がよいのか、そのままでよいのか決めかねているのですから、顧客にとってはこれが目下一番の「気になること」であるはずです。すなわちインサイトであるはずです。

ということはこの認知フェーズにおいては「ロゴデザインを変えるメリット」を前面に押し出した訴求をするのが正解ということになります。

一方、比較検討フェーズ、すなわち「どのデザイン会社に依頼しようか」と考えている段階にある場合は何を訴求すべきなのでしょうか?

これも同様にその段階での顧客インサイトが何であるかが判れば答えは簡単でしょう。

そうです。正解は「競合他社との差別化ポイント」です。

しかし、もしこれらが逆であったならどうでしょうか?

認知フェーズで「具体的な差別化ポイント」を訴求しても担当者はまだピンとこないはずです。したがってメッセージを目にしてもそのままスルーされてしまうことでしょう。

また比較検討フェーズで「メリット」を持ち出しても「そんなの知っているよ」と鼻であしらわれることでしょう。

つまりフェーズごとのインサイトに沿った訴求をしないと顧客の心は掴めないということです。

ここでもうひとつ、補足しておきます。

メッセージがフェーズごとのインサイトに対応しているのと同様、広告媒体としてのメディアもまたフェーズごとに対応しているのが普通です。

通常、新聞やポータルサイトなどは認知フェーズに対応したメディアとして不特定多数に広く浅く呼びかける目的で利用されます。一方、専門誌やテーマを絞ったウエブサイトなどは通常、比較検討フェーズに対応したメディアとして見込み客に狭く深く呼びかける目的で利用されます。

コピーライティングの書き方 その12 商品ライフサイクルとコピーライティング

またインサイトは商品ライフサイクルによっても変わります。

商品ライフサイクルというのは、商品が市場でたどるサイクルを人の一生にたとえたものです。

それは一般に「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の四つに分かれます。

ここで重要なのは、それぞれの段階ごとにマーケティング目標が異なることです。

つまり商品がいまどの時期にあるかによって訴求する力点も変わってくるということです。

たとえば導入期においては「需要喚起」が最重要目標になります。なぜそうなのか、といえば今までにない新しい商品である以上、まずはどういう商品なのかを知ってもらうとともにそれを欲しいと思ってもらう必要があるからです。

したがってこの段階では、それがいかに便利なものであるか、その効能をアピールすることが最重要課題となります。また効能ばかりでなく、商品の世界観にも共感してもらう必要があります。

ではこれが成長期を経て、成熟期に入ったらどうでしょうか? 

導入期にはライバルはあまりいないものですが、これが成熟期になると多くのライバルが出てくるのが普通です。二匹目のドジョウを狙って多くの企業が参入してくるからです。

当然、競合他社と競争するためには違いを明確にしなければなりません。そこで重要になってくるのが差別化です。

差別化というのは、競合商品との違いをあきらかにして、「うちはここが違う!」とアピールすることです。そうしないとせっかくの特徴が競合商品の中に埋もれてしまいます。その結果、売る機会を損失してしまいます。

したがって成熟期における最大の課題はといえば、「差別化」になります。すなわち成熟期においては差別化のポイントを中心に各論的なメッセージを発信するのが正解ということになります。

このようにインサイトとそれに基づくパワーワードの設定においては、カスタマージャーニーばかりでなく商品のライフサイクルとの関係も考慮する必要があります。

ここでいったん結論を言っておきます。

売るコピー、インサイトコピーを作る上で忘れてならないことはなにか?

それは

商品ライフサイクルとカスタマージャーニーを見極めた上で、インサイトに沿った訴求をするべし

ということです。

まとめ

最後に今回の内容をまとめておきます。

キャッチコピーはボディコピーに誘導する役割である → 必要な要素は「パワーワード+謎」

ボディコピーは買わせる役割である → 必要な要素は「パワーワード+解決策」

パワーワードはカスタマージャーニーのフェーズによって変わる

商品ライフサイクルによっても変わる

パワーワード(インサイト)が8割 レトリックが2割

コピーライティングを作成する上でもっとも重要なのはパワーワードである

問題は、パワーワードのもとになるツボを押さえたインサイトを発見できるかどうか?

現在、パワーワードを発見するたしかな手法はない 勘と試行錯誤しかない

しかしうまく発見できれば効果の高いインサイトコピーが作れる 爆発的に売れるだけでなく継続的に売れ続けるロングセラーコピーを作ることができる

ちなみにパワーワードの発見には、「カスタマージャーニーマップ作成」が(ある程度)役に立つ

●また筆者が開発した「コンセプト最適化ツール」も役に立つ(と思う)

コピーライティング発想のヒント

ここはおまけです。

コピーを書く上でのヒントを先に挙げたAIDMAの変形モデルであるAIDCAをもとにまとめてみましたので、参考になさってみてください。

ここではすべてを紹介できませんので、いくつかピックアップして簡単にご説明します。

【注目・関心段階】

キーワード「キーワード」というのは、パワーワードとほぼ同じです。これが注目を集め、関心を引く上で欠かせない要素であることはここでご説明した通りです。

数字「数字」というのはたとえば「満足率92%!」などという言葉です。数字にはある種の魔力があります。具体的な、それも詳細な数字を示されるとそこになんらかの真理があるように思ってしまうものです。その結果、興味がかきたてられることになります。これはそれを利用したテクニックです。

【欲求段階】

イマジネーション

「イマジネーション」というのは、その商品が醸し出すイメージのひろがりです。通常、強いブランドほどその周りには豊かなイメージが付随しているものです。たとえば東京銀座と地方のなんとか商店街ではまるで違います。前者はその言葉を目にしただけで様々なイメージが広がりますが、後者は地元の人でないかぎり「なにそれ? どこそこ?」という感じでしょう。これは、そうしたイメージを強化することで、商品の魅力を高めるテクニックです。ちなみに具体的な方法としては、商品にまつわる物語を開発し、訴求するといった手法があります。

誇り

「誇り」というのはその商品を使うことが誇りになることをアピールする方法です。その商品を持っている俺(私)ってかっこいい(素敵)、と思わせたらしめたもの。他の商品スペックが少々見劣りしたとしてもターゲットはきっとあなたの商品を選んでくれることでしょう。

使用後の幸福感

商品というのはそれを使って何らかの課題を解決するためのものです。したがって解決した後で得られる幸福感を明確にイメージさせることは「欲求」を喚起させる上で有効な手段となります。ひらたくいえば射幸心を煽るということです。要するに宝くじのコマーシャルなどでよく見る、当たった後のゴージャスな暮らしぶりを描く、あれです。あまりあからさまにやるといやらしくなりますが、それでもこの手法はいまもコピーライティングにおけるもっとも重要テクニックとしてよく使われています。

説明は以上です。あとはそれぞれヒントをもとに想像をめぐらしながら、ご自身で考察なさってみてください。

もっと体系的にコピーライティングを学びたい方はこちら↓
コピーライター育成オンラインアカデミー【Online ApC Academy 無料トライアル】

タイトルとURLをコピーしました