何を書けばよいか思いつかない時は?
文章が苦手という人の中には、原稿用紙を前にインスピレーションが湧いてくるのをただひたすら待つだけという人も多いようです。
そのうち素晴らしい天啓が降りてきて、憑かれたように書きはじめ、気がつけば文豪をもうなせる名文がいつまにか完成していたーー。そんな奇跡的などんでん返しを期待しているのかもしれません。
しかしながら漫然と待っていてもそのような天啓が降りてくるとはかぎりません。場合によっては何日も、あるいは何ヶ月待ってもそうならないことだってありえます。締め切りがない人であれば、もちろんそれで構わないでしょう。しかし、そうでない人はこれでは困ります。
では、どうしたらよいのでしょうか?
天啓を人為的に降ろすより他にないでしょう。
ーー天啓を人為的に降ろす?
でもどうやって‥?
じつは天啓なるものの正体はといえば、「問い」なのです。「なぜ?」「どうして?」というあの問いです。
人の頭脳が働き始めるのは、何かに疑問を持った時です。「なぜ?」「どうして?」という疑問が生じた時、思考のエンジンがかかるのです。じつのところ天啓が降りたと感じるのは、思考のエンジンがかかり始めたことを感知した時に生じる脳内の感覚でもあるのです。
人間の頭脳というのは、目の前になんらかの疑問があるとそれに答えを出さないと落ち着かないようにできています。疑問というのは理解不能な状況です。それはもしかしたら生存を脅かす重大な危機かもしれません。そのため、人間の頭脳というのは目の前に問いを与えられると、自然な生体反応としてそれに対する答えを出すようプログラミングされているのです。そればかりでなく、その答えを出さないうちは機能を停止しないようにつくられているのです。
‥ということは。
そうです。
意識的に問いを立てることによって、天啓を降ろすことができるということです。
すなわち天啓とかインスピレーションとか呼ばれるものは、きちんとした問いを立てることによって人為的に呼び込むことができるのです。
ただし問いの立て方にもコツがあります。
自分ごとの問題として問いを立てる
たとえば、今現在、与えられたテーマでのレポートの課題を前に、何をどう書こうかアイディアが浮かばなくて行き詰まっている、という人も多いのではないでしょうか。
テーマ(問い)を与えられているのになぜアイディアが浮かばないのでしょうか?
それはそのテーマを自分自身の問いとして正面から受け止めていないからです。どこか他人事の問題として距離をおいてみているからです。
自分自身に関連する切羽詰まった問題でなければ、当然ながら危険を回避する最適解を探し出すという脳の生体反応は生じません。
(いうまでもありませんが、課題を提出しないと落第するしないといった意味ではありません。あくまで課題であるテーマ(問い)に対して自分なりにそれをどう受け止めるかという意味です)。
たとえば極端な例ですが、なんらかの濡れ衣を着せられ、警察に取り調べを受けていると想像してみてください。
もちろんあなたは非難されるようなことは一切していません。
そんな時、あなたはどうしますか?
おそらく普段いかに無口な人であろうと「自分はそんなことしていない。無実だ!」と言葉を尽くして、切々と、時にはマシンガントークのような口調で懸命に冤罪であることを訴えるのではないでしょうか。
ここから分かるように問いを立てるコツも、そういう自分に関わる切羽詰まった状態に自らを追い込むことにあります。
つまり、「自分ごと」の状態になるよう問いを自分の方に引き寄せ、その視点から新たに問いを再定義するということです。
そうすれば、インスピレーションというのはいやがおうにも必ず湧いてきます。
今現在、どうもいいアイディアが浮かばない、という人は、まず問いを明確にしてみてください。そしてそれを「自分ごと」として受け止められるよう、その視点をずらしたり、部分拡大したりして再定義してみてください。
その再定義した問いが自分ごととしてかっちりはまれば、その瞬間、脳内のスイッチが入ります。そうなればあとはお茶でも飲みながらゆったりと待っていればよいでしょう。早い遅いはあれどやがて天啓が降りてくることは間違いないからです。
ちなみに、どれだけの天啓が、どのくらいの時間差で降りてくるかは、その問いがどれだけ「自分ごと」として受け止められたかに比例します。それが、より「自分ごと」として受け止められるほど、大量のインスピレーションが、それも時間をおくことなくただちに降りてくるはずです。
文章の書き方|たった三行の文から組み立てる目からウロコの作文術!
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。