要約すると‥
・webマーケティングは「webサイトをベースに行うマーケティング」です
・「情報発信コストの低下」「コミュニケーションの双方向化」「成果が数値で見える」といったメリットがあります
・歴史が浅い分、チャレンジ精神のある人にとっては力を発揮しやすい分野です
・仮説検証能力とデータを読み取る能力が求められます
・webマーケティングで重要なのはターゲットを明確にすることです
はじめに
いまやwebマーケティングはあらゆる企業にとって避けて通れない最重要課題のひとつとなっています。
その一方で、新設されたばかりのwebマーケティング部門にいきなり配属された人のなかには、そもそもwebマーケティングとは何なのか、何をどうしたらよいのか、という基本的なことがわからず、戸惑っている方も多いのではないでしょうか?
そこで、ここではそんな悩めるwebマーケッター一年生の方へ向けて、webマーケティングの全体像をできるだけわかりやすく解説してみました。webマーケティングとは何か、という辞書的な説明にとどまらず、どうすればうまくできるのか、という実践的な部分についても触れています。
これからwebマーケッターを目指そうという方にも役立つかと思います。どうぞ最後までお読みください。
webマーケティングとは?
webマーケティングとは何でしょうか? ひとことで言えば、「webサイトをベースに行うマーケティング」です。
代表的なものにネット上で商品を直接販売するオンラインショップ(Eコマース=EC)があります。
似たような言葉にデジタルマーケティングというのがありますが、こちらはもう少し広い概念になります。
図示すると以下のようなイメージです。
webマーケティングがあくまでwebサイトを主軸にその範囲内で行うものであるのに対し、デジタルマーケティングはそれに縛られず、より幅広い領域でデジタル技術を活用するというのが両者の違いです。
たとえるなら、webサイトという地球の重力が届く範囲内で行うのがwebマーケティングで、重力に縛られない宇宙空間で活動するのがデジタルマーケティングであるといえるでしょう。
そしてオンラインショップマーケティングは、webマーケティングの一部であると同時にその代表的なひとつとして位置付けられます。
このようにwebマーケティングといった場合、必ずしもオンラインショップに限定されるものではありませんが、ここではイメージしやすさとわかりやすさを優先して、webマーケティングほぼイコールオンラインショップ(EC)マーケティングという前提で説明していきたいと思います。
なぜwebマーケティングが注目されているのか?
なぜ近年、webマーケティングが注目されているのでしょうか? いくつか理由は挙げられますが、筆頭にくるのはなんといってもその圧倒的なメリットでしょう。
以下、webマーケティングのメリットをひとつずつ見ていきます。
マーケティングコストの劇的な低下
これまで企業が消費者にメッセージを届ける場合、新聞やテレビなどのマスメディアに頼らなければなりませんでした。そしてそのためには多額な広告料を払う必要がありました。
一方、webマーケティングの場合、そのような多額なコストは必要ありません。必要なのはインターネットに接続していること、そして一台のパソコンがあることだけだからです。
これによって中小零細企業はもちろん、個人事業主であっても本格的なマーケティングがいつでも手軽に行うことが可能になったのです。
地理的な制約がない
もうひとつのメリットは地理的な制約がないことです。従来のオフラインマーケティングではメディアによって情報が届く範囲が限られていました。しかしインターネットを使うwebマーケティングにはそのような制約はありません。必要なら地球の裏側にいる人に情報を届けることもwebマーケティングなら簡単にできます。
双方向性
従来のマーケティングは企業から消費者への一方通行のコミュニケーションでした。それに対して、webマーケティグでは、双方向のコミュニケーションが可能になります。メールやチャットなどを利用することで簡単かつリアルタイムに消費者と対話することができるからです。
この双方向性には、消費者をより深く、それも第三者を介することなくダイレクトに知ることができるというメリットがあります。これもまたwebマーケティングが注目されるようになった理由といえるでしょう。
成果が数値で見える
従来のマーケティングには成果が数字で見えにくいという欠点がありました。注ぎ込んだ広告予算に対し、それがどれだけ売上に貢献したのか、直接的な因果関係が判断しずらかったからです。そのため、どこにどんな問題があるのか探ることが難しかったばかりでなく、たとえ探ることができても計量的なデータがないため具体的な改善に活かすことが困難だったのです。
それに対して、webマーケテイングには成果が数値で見えるというメリットがあります。数値が見えるというのは、どこが問題なのかが客観的にわかるだけでなく、その対策を立てる際のヒントも得られるということです。それはすなわち、実効的な改善策が取れるということにほかなりません。
このようにwebマーケティングには成果が数字で見えるというメリットとともに試行錯誤しながら目標に確実に近づいていけるというメリットがあるのです。
DX化でますます注目されるwebマーケティング
webマーケティングが注目されているもうひとつの理由は、それがすべての企業にとって欠かせないものになると予想されているからです。背景にあるのはDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展です。DXとは、IT技術が社会を変革していくことを指す言葉ですが、一般にはデジタル技術によって「今までの常識が破壊されるほど」大きく、劇的に社会が転換していく不可逆的な動きとして捉えられています。
実際、近年におけるその急速な進展によってデジタルとアナログの融合が劇的に進み、アナログとデジタルという従来の区分はもはや意味を失いつつあります。
マーケティングも例外ではありません。マーケティングの世界でもデジタルの活用はいまや不可欠かつ当たり前の時代になろうとしています。そしてwebマーケティングはそのために欠かせない基本的なツールなのです。
webマーケティングの歴史
ここでwebマーケティングの歴史を振り返ってみましょう。webマーケティングが誕生したのはインターネットが普及しはじめた1990年代のことです。といっても本格化したのはスマホが登場したあとのことですから、実際にはまだ10年ちょっとの歴史しかないといってもよいでしょう。
歴史が浅いだけに、その方法論についても完全に確立されたとはいいがたい状況にあります。たとえば、オンラインショップにおける消費者行動理論ひとつとっても、AISASやSIPS、5Aなどさまざまなモデルが次々と出る一方で、これが決定版といえる標準的なモデルはいまだ確立されていないのが現状です。
しかしそのことは、それだけ変化が激しい分野であることを示すと同時に、裏を返せばそこでは誰もがパイオニアとして新しいものを生み出せることをも示しています。
その意味でwebマーケティングの世界は西部開拓時代のようなものであり、チャレンジ精神とアイディアに富んだ人にとっては大きな可能性を秘めた魅力的な分野であるといえるでしょう。
※ちなみに筆者も『売上を10倍伸ばすホームページの作り方』という電子書籍を西暦2000年に上梓しましたが、その中で従来の消費者行動モデルであるAIDMAを元にしたAINDCAS(とその発展形であるPDCA)をAISASなどに先駆けて提唱しています。
webマーケティングの実際
では実際のwebマーケティングの仕事はどんなものなのでしょうか? 以下、オンラインショップを例に解説していきます。
オンラインショップのwebマーケティングといった場合、実務的な作業としては「サイト構築」と「サイト運営」のふたつに分かれます。
サイト構築
まずはサイト構築から見ていきましょう。
「サイト構築」には次のふたつの段階があります。
・企画
・サイト制作
企画
このうち企画はさらに次の4つの段階に分かれます。
1、目的の明確化
2、調査
3、戦略立案
4、サイト設計
目的の明確化
サイトの立ち上げにあたってもっとも重要なのは目的を明確化することです。オンラインショップであれば、通常、商品の販売がそれになると思いますが、企業サイトの場合、営業に重点を置くのか、人材採用を重視するのか、はたまた投資家向けの情報提供なのか、など企業によってその目的は異なるはずです。まずはそれを明確にしましょう。
同時にその目的はサイトの設計にもきちんと反映されなければなりません。そうでないとテニスボールを打つのに野球のバットを使うようなちぐはぐなことになってしまいます。
調査
次に必要なのは市場調査です。どの市場を相手にするのか、その市場はどれだけのボリュームがあり、競争の激しさはどのくらいなのか、またそこで自社が勝てる可能性はどのくらいあるのか、といった観点から狙うべき市場に当たりをつけます。
ここで役に立つのが、PEST、3C、ファイブフォース、SWOT、バリューチェーン、VRIOといった分析ツールです。マーケティングの世界にはそうしたツールがいくつも用意されていますので、ここではそれらを使って分析していくことになります。
戦略立案
狙うべき市場が有望であるとわかったら、次はどうやってそこへアプローチしていくかを考えるのがこの段階です。
なかでも重要なのは、ターゲットの設定です。ここでは市場という抽象的な概念ではなく実際の生活者としてのその実像を探った上でどうアプローチすれば効果的なのかを検討します。
またその際、よく使われるのがSTPです。これはセグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(狙うべき市場の決定)、ポジショニング(そこでの自社の位置づけの明確化)という三つの英単語の頭文字をとって名付けられた分析手法で、市場における自社の位置付けを確認するための方法論です。
それに加えてよく活用されるものにペルソナ分析があります。こちらはターゲットとなる顧客のニーズ(およびその裏にあるインサイト)をより深く洞察するための手法です。
ペルソナ分析とは? そのメリット 具体的なやり方とコツ 注意点
マーケティングとはつきつめていえば顧客を知ることです。その意味でこの戦略立案は前段階の調査と併せて、マーケッターとしての力量が問われるきわめて重要な段階といえるでしょう。
→ペルソナ分析をもとに適切なコンセプトを導き出すコンセプト最適化ツール
サイト設計
前段階までで導き出された戦略をもとに次はそれを実現するためにどんなサイト(オンラインショップ)にするのが最適かを検討します。そしてそれを設計図へと落とし込むのがこの段階です。
サイト制作
出来上がった設計図をもとにサイト(オンラインショップ)を実際に制作する段階です。ただし、ここは通常、web制作会社の作業になりますので割愛します。
ただし、ひとつだけ注意点があります。それは作業を制作会社に丸投げしないことです。これについては、後ほど再度触れたいと思います。
サイト運営
オンラインショップの運営は通常、「集客」「販売」「フォロー」のみっつの段階に分かれます。ただし、実際の業務においてwebマーケティング部門が「販売」まで直接タッチすることはあまり多くありませんので、ここでは「集客」と「フォロー」についてだけ見ていきます。
集客
ここは商品を購入してくれそうなリード(見込み客)を集める段階です。具体的な手法としては以下のようなものがあります。
SEO
広告
SNS
コンテンツマーケティング
SEO
Search Engine Optimatizationの略で、日本語では検索エンジン最適化と言います。要は、googleなどの検索エンジンで上位表示させるための施策です。ここにはhタグの適切な使用をはじめとする様々なノウハウがありますが、最近はそういった小手先のテクニックより、内容がオーディエンスにとって役に立つかどうかが重要視される傾向にあります。
広告
たとえSEOで上位表示されても、より多くのリードと接触を図るには通常それだけでは不十分です。そこで必要になってくるのが、有料の広告です。
webマーケティングにおける広告には次のようなものがあります。
リスティング広告
検索エンジンの検索結果画面に表示される広告です。検索連動型広告、もしくはPPC(Pay Per Click)ともいいます。代表的なものにgoogle広告とYahoo!広告があります。
アフリエイト広告
成功報酬型広告と呼ばれる広告で、通常、一般人が所有するサイトやSNSに掲載されます。商品が売れるなど一定のコンバージョンが発生した場合にだけ費用が発生するので、費用対効果が高いのが特徴です。
アドネットワーク広告
複数のサイトに横断的に掲載できる広告をアドネットワーク広告と言います。アフリエイトが主に個人サイトに掲載されるのに対し、こちらは一定以上のアクセス数をもつ有名サイトにのみ掲載されます。Google ディスプレイ ネットワーク(GDN)やYahoo! ディスプレイアドネットワーク(YDN)などがあります。
SNS広告
TwitterやFacebookなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)上に掲載する広告です。他の広告に比べ、ターゲット属性がより明確であること、興味関心に基づいた絞り込みが容易であるといった利点があります。
SNS
SNSはソーシャルネットワーキングサービスの略で、代表的なものにtwitterやFacebook、Instagramなどがあります。最大の特徴はユーザー同士がつながれること。その特徴をうまく使うことで情報を一気に拡散させること(いわゆるバズる)も可能になります。
コンテンツマーケティング
ユーザーにとって価値のあるコンテンツ(記事や動画など)を発信することで、リードを獲得する手法です。
「低コストではじめられる」「蓄積したコンテンツは資産になる」「ニーズをもつユーザーを引き寄せることができる」などのメリットがあります。
一方的な情報発信による売り込み型のマーケティングが忌避される中、いまもっとも注目されている手法のひとつです。
フォロー
フォローとは、一度購入してくれた顧客に働きかけて継続的な購入を促すことです。要はリピーターになってもらうということです。
具体的な手法としては代表的なものにメルマガがあります。これは定期的な情報提供をすることでお客様とのつながりを保ち、同時に満足度とロイヤルティを高めることで継続的な購入を促すのが目的です。
また企業サイトなど、オンラインショップ以外のwebマーケティングでは、営業上の成約には至らなかったものの問い合わせやホワイトペーパーのダウンロードなどを行ったリードに対し、それぞれ適切な文面のメールを一定の時間をおいて送信するステップメールによる「リードナーチャリング(顧客育成策)」が行われることもあります。
PDCA
もうひとつ、webマーケティングの運営においては、忘れてならないキーワードがあります。PDCAです。
PDCAというのは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のサイクルを回しながら業務を改善していく方法論です。そうすることで、ゴールまでの道のりが明確になり、目標達成がしやすくなるという利点があります。
PDCAを行う際、大切なのは具体的なKPI(目標値)を設定することです。そうしないと改善に向かっているのか、そうでないのかわからなくなり、作業がマンネリ化してしまうからです。逆に設定されていれば、それが一目でわかるため、モチベーションアップにもつながります。
webマーケティングでは、このPDCAという概念はきわめて重要です。それなくしてwebマーケティングはありえないからです。というより、webマーケティングの運営といった場合、このPDCAを回すことそのものであるといっても過言ではないでしょう。
webマーケティング業務に必要な能力は?
では、webマーケティングを行う上で要求される能力にはどんなものがあるのでしょうか? そこでもっとも必要とされるのは仮説検証能力です。
仮説検証能力とは、文字通り、仮説を立て、それが正しいかどうかを検証するための能力です。
ある問題の解決策を得るためには、その背景にある因果関係を知らなくてはなりません。そして因果関係を知るにはなぜそうなるのか、という仮説を立てた上で、それを検証する必要があります。これは科学的な研究が「科学的」であるためには必ず踏まなければならない手順です。
一方、webマーケティングは、目標(通常は「商品を売ること」)を達成するにはどうすればよいかという問題に対する解決策を探ること、それと同時にそのための具体的な施策を打ち出していく作業の連続です。すなわち、webマーケティングとはそれ自体が仮説検証プロセスそのものといえるでしょう。そのためwebマーケティングでは、なによりも仮説検証能力が必要とされるのです。
この部分は重要ですので、もう少し掘り下げて見ていきましょう。
仮説検証能力には仮説立案能力と検証能力のふたつがあります。
仮説立案力
仮説とは、現象の裏にある因果関係を説明するために仮に立てる説をいいます。そして仮説立案力とは、文字通り、その仮説を立てる能力のことをいいます。
では、仮説を立てるためにマーケッターに求められる能力とはいったいなんでしょうか?
柔軟な発想
第一に求められるのは柔軟な発想です。何かを探す際はできるだけ視野を広くもつ必要があります。探し物は往々にして意外な場所にあったりするものですが、ここ以外ないはずと同じところを探し続けていては、永久に見つかりません。仮説を立てるのも同様です。「こうに違いない!」という思い込みはいったん脇に置いた上で幅広い視点から柔軟に発想する必要があります。固定観念や視野狭窄は仮説を立てる上では最大の敵なのです。
社会への感度
もうひとつ、柔軟な発想と並んで重要なのが社会への感度です。
商品を売るためには生活者を含む社会全体ーーとくにその裏にある「気分」ーーを洞察する必要があります。しかし、多くのマーケッターが渇望しているにもかかわらず、それを客観的に洞察できる科学的な方法論はいまだ発見されていないのが現状です。
そこで必要になってくるのがマーケッター自身の社会への感度です。それがあってはじめて社会を洞察するというパズルのピースが埋められるのです。
とはいえ、社会への感度は才能に左右される部分が多いのも事実です。というのも、それは科学的なプロセスによらず、直感的に市場の声を聞く能力だからです。ある意味、それができるマーケッターは神の声ならぬ市場の声を聞くシャーマン(巫女)のようなものだといえるでしょう。
そして、ここがカリスママーケッターと一般のマーケッターとの違いでもあります。
カリスママーケッターが重宝される理由
カリスママーケッターには、マーケティングの知識に加え、市場の声を直感的に聞くことができるある種の超能力があるように見えます。カリスママーケッターがしばしば大ヒットを飛ばすのもおそらくそうした能力のゆえでしょう。そして、カリスママーケッターが重宝される理由もまたそこにあるのです。
ただしそうした直感的な能力がいつも正しい答えを出すとはかぎりません。それにそうした属人的な能力は何らかの理由で感度が鈍ることもあります。そのため、マーケッターの個人的な直感だけに頼っていてはいつか大きな失敗を招く恐れがないともいいきれません。
そうならないためにも、マーケッターは原則として冷静な科学者であるべきです。もちろん、そうした能力がある人は必要に応じてそれを存分に発揮すべきなのはいうまでもありません。けれど、ベースとなる作業においてはどこまでも科学的な手法とそれによる結論を最優先すべきです。その上で、どうしても判断に迷う部分だけを直感に委ねるのがマーケッターとしての理想的なありかたといえるでしょう。
仮説検証能力
仮説検証能力には仮説立案能力と検証能力のふたつがあるといいました。ここでは、もう一方の検証能力について見てみましょう。
まず検証能力とは何か、ですが、これも文字通り、仮説が正しいかどうかを検証する能力のことです。
ではそこで必要とされる能力には一体どんなものがあるのでしょうか?
webマーケティングの場合、データを元に検証しますので、データを読み取る力がそれに相当します。もう少し具体的にいうと、KPIを測定しながら仮説として打ち出した改善策が期待した通りの効果を生み出しているかどうかを検証する能力がそれです。
またその際、ポイントとなるのはどれだけ客観的な視点を持てるかという点です。
なぜ客観的な視点を持つ必要があるのでしょうか? 客観的な視点がないと正しい結論が導き出せないからです。ましてやそこに主観が入ると解釈が歪んでしまい、結論も歪んでしまうからです。
そのため、思い込みの強い人はwebマーケッターには不向きといえるかもしれません。また、先ほどマーケッターは市場を分析する冷静な科学者であるべきと述べましたが、これはその点からも同様に裏付けられるでしょう。
webマーケティングを成功させるポイントは?
webマーケティングを成功させる上で重要なポイントは一体なんでしょうか? それはターゲットを明確にするということです。ターゲットがどんな人で、何を求めているのかがわからなくては、どんな施策を打てばよいかがわからないからです。逆にそれさえわかれば何が効果的な施策なのかも自ずと明らかになります。
ではターゲットを明確にするにはどうすればよいのでしょうか? それには戦略立案のところで説明したように、「ペルソナ」や「STP」などの分析ツールを有効活用することです。それらを上手に活用することでターゲット像が明確になり、同時に効果的な施策も見えてきます。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」ーー。古代中国の有名な兵法家・孫子がいうように、戦いにおいては敵を知ることがもっとも大切です。そしてそれはwebマーケティングにおいても同様です。すなわち、webマーケティングを成功させるコツもまた敵ーすなわち顧客を知ることにあるのです。
webマーケティングにおける注意点は?
最後にwebマーケティングにおける注意点について触れておきましょう。
受動的な運営に終始してはいけない
webマーケティングを行う上で注意すべきことのひとつは、受動的な運営に終始してはいけないということです。
webマーケティングの場合、その作業の多くはPDCAを回すこと、すなわち日常的な運営になるわけですが、その目的は「売れる仕組み」の構築にあります。昨日と同じことを単純に繰り返すのは本来のwebマーケッターの仕事ではありません。
これが何を意味するかといえば、より効果的かつ使いやすいものにするにはどうするかという観点からwebマーケッターは、いまあるwebサイトの改善を常に図っていかなければならないということです。
言い換えれば、現在のwebサイトが目標を達成する上でなんらかの不具合があるとわかったならば、小手先の改善にとどまらず、一から作り直すことも考慮しなければならないということです。
制作会社に丸投げしない
これと関わることですが、もうひとつ注意点として挙げておきたいのは、webサイトを新たに作ったり、リニューアルをしたりする際、制作会社に丸投げしないということです。
理由はシンプルです。制作会社はマーケティングの専門家ではないからです。
もちろんマーケティングに強い制作会社はありますし、実際それを謳っているところもありますので、その場合はまた別の話です。けれど一般の制作会社は必ずしもそうではありません。
そのため、企画段階から制作会社に丸投げすると、往々にしてまるで的外れなものが出来上がってしまうことがあります。しかし、そうなってから、そこはそうじゃなかった、といってもあとの祭りになります。
そうならないためには、発注側がどういうwebサイトにしたいのか、その方向性を制作会社にきちんと指示する必要があります。
いくら忙しいからといって、ターゲットの設定や戦略の部分まで制作会社に丸投げしてしまうのはいただけません。忘れてならないのは、戦略立案は制作会社の仕事ではなく、発注する側の仕事だということです。
その意味で、制作会社をうまく使いこなすこともまたwebマーケッターに求められる重要な能力といえるでしょう。
まとめ
最後にまとめておきます。
・webマーケティングは、「webサイトをベースに行うマーケティング」です。
・情報発信コストの劇的な低下や双方向性のコミュニケーションが可能になる、成果が数値で見えるといったメリットに加え、DX化の進展により企業活動を行う上で欠かせなくなりつつあることから近年、ますます注目されるようになっています。
・歴史が浅く、その分、開拓の余地があります。そのため、チャレンジ精神と発想力に富む人にとっては魅力な分野です。
・実際の仕事は、企画と運営に分かれます。企画はサイト(オンラインショップ)を構築する作業、運営はそれを使ってPDCAを回す作業です。
・仮説検証能力が求められます。とりわけ求められるのはデータを読み取る能力です。
・webマーケティングで成功するためには、なによりターゲットを明確にすることが重要です。
・webマーケティングで大事なのは、「改善」です。与えられた枠組みでの改善を目指すばかりでなく、時には枠組みを一度壊して新しく作り直すことも必要です。
・webマーケッターには制作会社を上手に使うことも求められます。
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売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。