コンセプトはマーケティングにおいてきわめて重要な概念です。なぜコンセプトがそれほど重要なのでしょうか? 理由はそれが事業とその競争戦略すべての基本になるものだからです。事業およびその戦略の設計図=DNA(遺伝子)であるといってもよいでしょう。
どういうことでしょうか? 以下、それを競争戦略ツールとの関わりの中で解き明かしてみようと思います。
マーケティングにおける競争戦略のための分析ツールは世にあまたありますが、それぞれどういう使い方をすればよいのでしょうか。試しに次元という視点から整理してみました。
マーケティングにおける競争戦略 0次元 コンセプト
競争戦略を一言で簡潔に表現したものがコンセプト。すべての中心点であり、いわば0次元。
マーケティングにおける競争戦略 1次元レベル AIDMA
消費者の購買行動を注目、関心、欲求、記憶、行動という一連のプロセスに還元した線形分析ツール。
マーケティングにおける競争戦略 2次元レベル SWOT分析
強み、弱み、機会、脅威を要素とする二次元のマトリックスを作成、それをもとに競争戦略を考察するツール。
マーケティングにおける競争戦略 3次元レベル ファイブフォース分析
自社業界を中心に売り手と買い手、そして新規参入と代替品という構図で立体的に業界分析を行うツール。
マーケティングにおける競争戦略 4次元レベル ポートフォリオ分析
今、何を重視すべきか、何を捨てるべきか、将来、何をのばすべきかと時間軸のなかで経営資源の配分を考察するツール。いわば時間軸の中での生き残りをはかるための競争戦略ツールです。
マーケティングにおける競争戦略 5次元レベル ミッション
以上のツールでとりあえず生き残ることはできるでしょう。しかし、それがなぜ存在するのか? なぜ存続すべきなのか? という根本的な疑問に答えられない事業に存在する意味があるのでしょうか? むしろ下手に長期的に存続するだけに、逆に負の遺産として社会に害毒を流し続けるだけの存在になるおそれがないのでしょうか? ということで、それはなぜ存在するのか、というひとつ上の次元での考察も必要です。
まとめると、大本は0次元のコンセプトです。コンセプトは5次元までのすべての競争戦略を含んでいなければなりません。すなわちコンセプトを展開すればそのままAIDMA、SWOT、ファイブフォース、ポートフォリオ、ミッションが見えてくるし、逆もまたしかり。すなわちミッションを凝縮させればポートフォリオに、ポートフォリオを凝縮させればファイブフォースに、という具合にそれぞれ下の次元に還元できるのが理想といえるでしょう。
閑話休題
これは国家レベルの政策にも当てはまるかもしれません。
たとえば、中国やロシアの国家政策は3次元を上回ることがありません。どういうことでしょうか? 嘘をついたり、だましたりしてでも「現在の競争優位」を得ようとする傾向があるということです。しかしその結果、時間軸の中ではしだいに信用を失うことになります。
アメリカはどうでしょうか? いちおう「自由と民主主義」というミッションのようなものがあり、5次元レベルまで揃っているといえますが、そのミッションはいまやほとんど有名無実化しています。
翻って日本は5次元レベルまでをみすえた国家運営をはかるべし、ではないでしょうか?
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売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。