消費者行動モデル
消費者が商品を購入する際の行動パターンには、いくつかのモデルがあります。ここではそのなかでもっとも普遍的と思われる最新の消費者行動モデル(一番上)を取り上げ、さらにその各段階を「サイト側」からみた流れ、「ユーザ側」からみた流れ、そして古典的なモデルであるAIDMAモデルにそれぞれあてはめてみました。
※AIDMA(アイドマ)とは広告宣伝に対する消費者の心理プロセスを示した古典的なモデルです。AIDMAの法則では、商品を認知してから購入に至るまでに消費者は次のような段階をたどると仮定されています。
Attention(注意)
Interest(関心)
Desire(欲求)
Memory(記憶)
Action(行動)
webサイト(オンラインショップ)のマーケティングモデル
一般にwebサイト(典型的なのがオンラインショップ)は、次の三つの段階から成り立っています。すなわちお客様を連れてくる「集客」段階、そのお客様に実際に購入してもらう「購入」段階、そして購入したお客様をリピーター客にする「フォローマーケティング」段階の三つです。 このことを示したのが上図です。
また各段階には、それぞれ「集客力」「表現力」「リピート力」が対応します。さらにここから「販売力=集客力×表現力×リピート力」というオンラインショップの販売力をあらわす公式が導きだされます。
AIDMAモデル(マスマーケティングの例)
この図は、古典的なAIDMAモデルをマスマーケティングに当てはめたものです。簡単に説明しますと、まず最初にTVコマーシャルなどで「注目」を集め、その後、新聞・雑誌広告などで「興味」と「欲求」をかきたて、同時に商品名を「記憶」させる。さらにその後、店頭に足を運んだ際に「あ、あの広告で見た商品だ!」と思い出させることで「購買」行動につなげるという流れです。
AIDCAモデル(ダイレクトマーケティングの例)
こちらは通信販売などのダイレクトマーケティングにおけるAIDMAの流れです。ただしダイレクトマーケティングではその場で購入が完結するという性質上、「記憶」の段階はあまり重要ではありません。そこで、ここでは「記憶」の代わりに「確信」という段階をいれてみました。
ざっと説明します。まず最初に郵便物が届いた時に目に入るDMのデザインで「注目」を集めます。と同時に問題解決を示唆するようなキャッチコピーで「興味」をそそります。興味をもった人は、封筒を開けて中を読む事でしょう。中にある説明文(ボディコピー)を読んだ人は、これはよさそうだぞと「欲求」をかきたてられます。
しかし、この段階ではおそらくまだ半信半疑でしょう。そこでよく使われるのが、大学教授や有名人による推薦文です。推薦文を読む事でこれだけ権威のある人が保証しているのだから間違いないだろう、と「確信」します。ここまでくれば後は一気呵成です。見込み客はただちに返信用ハガキに必要事項を書き込み、とるものもとりあえず郵便ポストに直行することでしょう。
ちなみにこの最後の「購買」段階で重要なのは、一度高まった「買う気」をそがないよう邪魔をしないこと、また買うか買うまいか決断しかねている人の背中を押してやることにあります。
webマーケティング(オンラインショップ)
同様にオンラインショップにおける流れをAIDMAに沿って見ていきましょう。まず注目段階です。これは検索エンジンで調べた時に出てくる候補リストがそれに相当するでしょう。またバナー広告やリスティング広告などのネット広告もここにあてはまります。もちろんURL付のテレビコマーシャルや雑誌広告もここにはいります。
次に興味段階ですが、ここも注目段階とほぼ同じと考えてよいでしょう。つまり、検索エンジンでは「注目」を獲得することと同時に「興味」をかきたてることが重要な目的となります。
さてここで興味をもった人は、クリックしてホームページを訪れるはずです。次に来るのが欲求段階ですが、これはホームページ自体、とくに商品ページなどがそれに相当するでしょう。
ここで欲求をかきたてられた人は、さらに確信を得るため、次にお客様の声などを調べるはずです。あるいはどういう素性の店なのを知るため、店舗紹介ページなどを見るかもしれません。これらのページは広い意味で情報公開のためのページといえるでしょう。
最後が購買段階です。これはいうまでもなく注文ページに相当します。
オンラインショップに必要な表現要素
以上を踏まえて、オンラインショップに必要な表現要素について考えてみます。まず注目と興味ですが、これまでの説明からもわかる通り、ここは「集客」としてひとまとめにしてもかまわないでしょう。
またAIDMAによれば次に欲求段階が来ますが、さきほど見たようにここは商品ページに相当します。しかし、そのように単純に割り振ってしまうと少々問題も出てきます。トップページが宙に浮いてしまうのです。この問題を解消するため、ここでは「アクセスしてきた人を商品ページまで適切に導く」という意味で、「誘導」という段階を新たに加えてみました。そうするとトップページは、この誘導段階に相当することになります。
確信段階が情報公開に、購買段階が注文フォームに相当するのは、さきほどみた通りです。ところでオンラインショップの場合、ここに加えるべきもうひとつの重要な段階があります。それは顧客満足です。顧客満足はリピート購入を促す上で、またネット時代の購買行動に特徴的な「口コミ」を促すためにも欠かせない段階です。
オンラインショップ(webサイト)に必要な表現要素(実際)
以上、オンラインショップ(webサイト)に必要な表現要素を考察してみました。しかし、たとえ理屈の上ではそうだったとしても実際にはこれとはちょっと違うかもしれません。
というのもネット時代においては情報処理の効率を高めるため、最初にアクセスしたページ(一般的にトップページがそれに相当する)で、すみやかに「ここは見るに値するぞ」という印象を与える必要があるからです。
これは一般にトップページの3秒ルールとして知られています。つまり最初の3秒以内に「ここは見るに値するぞ」と説得できなければ訪問者はすぐに逃げていってしまい、永久に戻ってこないというわけです。
そして、「ここは見るに値するぞ」と判断させるためには「確信」段階をむしろ最初にもってきた方が効果的かもしれません。また訪問した人を引き止める手段としては、トップページを見た瞬間に「なんとなくいい感じだぞ。もう少し詳しくみてみよう」といった「好感」を持たせることも効果的でしょう。
こうしたことから、トップページには、「誘導」を目的とした要素ばかりでなく「確信」要素をも盛り込む必要があります。それだけ多くの要素が必要とされるトップページは、だからこそ重要であり、だからこそ慎重かつ戦略的につくりこまなければならないということになります。
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。