会社案内文、とくに企業理念を示す文では、しばしば倒置法が使われます。そうすることで、短くインパクトのある表現にできるからです。
なおここでいう倒置法というのは、通常の文章の形式である「導入」→「問い」→「答え」→「理由」→「まとめ」という順序をたどらず、そのいずれかを省略することでいきなり核心から入るような文章のことです。
では、そういった倒置法はどのように作ればよいのでしょうか? 例によって三行作文方程式をもとに考えてみました。
たとえばこんな文章です。
【原文】
(導入)なにもかもが不透明な時代です。
(問い)先の見えないこの時代を切り拓く力は何か?
(答え)それは文章力とマーケティング力です。
(理由)なぜならどちらも問題解決のための方法論だからです。
問題を探し出し、それに対する答えを示すという点では両者は同じものです。
前者は言葉で、後者は仕組みとしてそれを提案するものです。
(まとめ)混沌としたこの時代を切り拓く力。それは文章力とマーケティング力です。
【倒置文】
(主題)問題解決という点では文章とマーケティングは同じです。
(理由)どちらも問題を探し出し、それに対する答えを示すものです。
前者は言葉で、後者は仕組みとしてそれを提案するものです。
(まとめ)混沌としたこの時代を切り拓く力。それは文章力とマーケティング力です。
【結論】
倒置法は原文の理由を「主題および理由」に分解し、そこにまとめを加えるという形になります。またその際、原文の問いと答えがまとめになります。
おまけ
弊社の企業理念のコピーをもとに考察します。
【原文】
(導入) 21世紀はこれまでとは違う時代だ。
(問い) 私たちの思いは何?
(答え) マーケティングノウハウの提供を通して社会変革を後押ししたい。
(理由) マーケティングには社会を変える力があるから。モノを売る技術から社会を動かす技術へ、マーケティングが変わろうとしている。マーケティングはいまや販売促進という枠を越え、社会変革のツールとしても注目を集めるようになっている。
(まとめ) 私たちはそのノウハウをよりわかりやすく加工した上で、より多くの人たちに伝えることで社会の変革を後押ししたいと考えている。
【倒置文】
(主題) モノを売る技術から社会を動かす技術へーー。
(理由) 今、他のあらゆるものと同様マーケティングもまた大きく変わろうとしています。
いまや販売促進という枠を越え、社会変革のツールとしても注目を集めるようになったマーケティング。
(まとめ) 私たちはそのノウハウをよりわかりやすく加工した上で、より多くの人たちに伝えることで社会の変革を後押ししたいと考えています。
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。