文章作成で一番難しいのが「話題から問い」への落とし込み部分だ。
いきなり問いから始めるというやりかたもあるが、それだと唐突すぎて読み手がとまどってしまうことが多い。そこで付かず離れずの話題を最初にもってきてそこから問いへと抵抗なく導く必要があるのだが、これがなかなか難しい。文章を書く際、多くの人が書き出しでつまってしまうのはそのせいだ。
しかし、裏返せばこの書き出しの部分さえ乗り越えられればあとはそれほど難しくない。実際、うまい書き出しを発見したあとは自分でも驚くほど筆が進んだという経験をお持ちの方も多いのではないだろうか。
ではどのようにしたら「話題から問い」へとスムーズに落とし込むことができるだろうか?
これについても公式化してみた。
これである。
前提+立問
最初に「前提」を提示し、そこから問いを抽出するのである。
しかし、ここで問題になるのは「前提」とは何か? またそれをどう提示すればよいのか、であろう。
前提といっても漠然にすぎるからである。
そこで前提の部分をもう少し細かく分解してみよう。これである。
主題提示+解説(+接続詞+別視点提示)
前提の中心にくるのは「主題」である。主題というのは、ここで論じようとしているテーマである。たとえば猫の生態について書くのであれば、主題は「猫」であるし、国際情勢について書くのであればたとえば「米中対立」「EUにおける移民問題」などであろう。この主題は通常、いくつかの言葉からなるシンプルな名詞として示すことができる。
となれば最初の公式は次のようにも表せるだろう。
主題提示+解説(+接続詞+別視点提示)+立問
実際の場面ではこのようなやりかたが多い
前提+接続詞 →問い
●前提とは?
主題に関する現状や常識、何らかの前提
通常何がどうした、という形式
AはBである。
(例)
猫というのは普通こういうものだ
修飾句が多い場合ふたつに分けることもある。
XのA。(Aは)Yである。
(例)
Aが今話題になっている。
今話題になっているA。人気沸騰であちこちでひっぱりだこだ。
●主題提示
文章のテーマ、とくにその主体となるものごとを提示する
(例)
今話題になっているA。
●解説
主題を解説する
通常、何がどうした、という形式をとる
(例)
Aがいまひっぱりだこだ。
●接続詞+別視点提示
「だから・しかし・ただし・なかでも・一方・たとえば・では・そして」等の接続詞でもって最初に提示したものとは別の視点を提示する。
(例)
ところが、なかにはAを敬遠する人もいる。
●立問
視点の違いから見えてくる疑問を指摘する(視点を変えてみせることで問いを際立たせる)。
(例)
なぜ敬遠するのか?
以下もう少し文例をあげてみる。
●文例
以下、猫を主題とした別の文例
(1)
猫というのは普通こういうものだ
ところがなかにはこんな猫もいる
XXXな猫だ
それはどういう猫?(なぜそんな行動をとるの?)
(2)
猫というのは普通こういうものだ
一方、犬はこうだ
なぜ両者には違いがあるのか?
(3)
猫というのは普通こういうものだ
そのため特定の状況ではこんな行動を取りがちだ
その背景には何があるのか?
●つまり
常識→非常識→問いが生まれる
非常識な状況を発見する→それが問いになる
●補足
この部分はルポ的書き出しもよく使われる
起点イメージ+(それは何?=問い)謎解き1+謎解き2+謎解き3‥+感想(直接的な感想を書くのは野暮。心象風景に託して感想を述べる)
起点イメージを最初に出し、そこから謎をひもとくようにして話を展開させる
起点イメージ=映画の最初のシーンに使えるような印象的なシーン
このルポ的書き出しの場合、問題になるのはどのような方向に謎を解いていけばよいのかという部分。
謎など探せばいくらでも出てくる。そのためそのうちどれを選択すればよいのか悩んでしまうことになる。
どうすればよいか?
作文公式に当てはめればよい。
具体的には、起点イメージを話題に見立て、そこからまず大きな問いを引き出す。あとは作文公式に則りそれに答えを出し、必要に応じて理由と感想を付加すればよい。
もう少し詳しくいうと、起点イメージを現状の前提とし、そこにある自分が一番気になる問題点(文章の主題となる問い)をまず引き出す。その問題を切り口として前提となる起点イメージを解体し、腑分けしつつ、途中で生じる小さな問いに答えていけばよい。そして最後に感想を付加する、という具合だ。
ここからもわかるように何より大事なのは大きな問いである。前提の中にある問題点を引き出し、それを大きな問いとして提示する。その大きな問いが主題である。
主題提示
AはBである
解説
もっと詳しく
接続詞
普通は逆説が多い
別の視点導入
A’はBではない
立問
なぜ?
回答
それはCだからである。
論証
なぜなら〜
まとめ
以上、「話題」から「問い」への落とし込み方を説明した。繰り返しになるが、問いさえ立てられたらあとはそれに答えるだけである。そして必要に応じて、感想を付け加えるなり、なんらかの形でまとめれば文章は一通り完成したことになる。
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。