アウトラインというのは文章の柱となる骨組みのことです。具体的には、書き出しから本文、そしてまとめに至るまでの一連の流れを短い言葉で書き記したものです。
このアウトラインの作成は文章を書く上できわめて重要です。なぜならアウトラインもなしに文章を書くのは、地図もなしに目的地にたどり着こうとするようなものだからです。それは不可能とまではいいませんが、すくなくとも経験の浅い人は避けた方が無難です。
ではこのアウトラインはどのようにして作ればよいのでしょうか? 以下、その方法を「たかはし式三行作文公式」をもとに説明していきます。
三行作文テンプレートによる文章作成方法の流れ
1、材料の準備
●問いは文章の材料を脳内から掘り出すための掘削機
文章を書くには、材料が必要です。何について書くのかという、その何がなくては書きようがありません。
ではそうした材料は一体どこから仕入れてくればよいのでしょうか。基本的には頭の中です。もちろんより正確で詳細な情報は書籍やネット、あるいは直接取材など外部にあるものに頼らざるをえませんが、少なくとも何を書くのかという構想段階では原則として自分の頭の中に入っている材料(情報)をもとに組み立てる以外に方法はありません。
しかし、いざ頭の中から材料を集めようにも何も浮かんでこない場合も少なくありません。そのような場合、どうすればよいのでしょうか。頭の中から材料を拾い集めてくるコツのようなものはないのでしょうか。あります。それは「問い」の活用です。すなわち自らに質問することです。
具体的には
Aとは何か? Bである。
Bとは何か? Cである。
Cとは何か? Dである。
という具合に、日頃疑問に思っていることやなんとなく書きたいと思っているテーマに対して、次々と質問を積み重ねていくことです。そうすることで、あたかも畑を掘り起こすように必要な材料が頭の中から次々と掘り起こされてくるはずです。問いというのは、脳という情報の鉱山を掘り起こす掘削機のようなものなのです。
なおその際、どんな問を発すれば良いのか迷うかもしれません。その場合は、作文テンプレートにしたがって問いを出していくとよいでしょう。それでもわからない場合は、いわゆる5W1Hという視点であらゆる角度から問いをぶつけてみてください。そうしているうちに、どんな問いがより適切なのかもだんだん見えてくるはずです。
さらにその際、何が足りない材料なのかも見えてくるはずです。その場合、書籍やネットなど外部の記憶媒体にアクセスしたり、取材するなどして随時補っていきます。
2、作文公式の作成
さて、問いを繰り返すことで、文章の材料、すなわち書くべき「何」が次第に見えてきたはずです。
次にやるべきことは、文章の主題となる「問」を決めることです。まずは前段の作業を通して出てきた複数の問いの中から、一番取り上げたい問いを選んでください。
選びましたか?
ではそれをもとに作文公式を作成していきましょう。
作文公式というのは、
AはBである なぜならCだからである したがってDだよね
という三行からなる定型文です。
ご覧のようにここでは問い(A)と答え(B)だけでなく、その理由(C)とまとめ(D)も必要になります。前段階での一連の掘り起こし作業の中ですでにこれらも一緒に掘り起こしていたという人もいらっしゃるかと思いますが、もしまだであればもう一度「問い」という脳内掘削機を使って掘り起こしてみましょう。
3、テンプレートへの代入
次にこの作文公式をもとに作文テンプレートに変数(ここでいうABCD)を代入していきます。
具体的には次のようにします。
A→問
B→答え(描写)
C→論証(解題)
D→まとめ
続いて話題、すなわち導入部分を考えます。
もちろん、話題を省略し、いきなり問いから始めてもかまいません。ただし、通常は糸口となる話題があった方が読みやすくなります。というのも、それがないと何について話しているのかすぐには理解できず、読み手が混乱してしまうからです。
とはいえ、持って回ったような導入部分はいただけません。回りくどい導入は読者を苛立たせるだけです。話題は、どうしても必要な場合のみ入れるようにした方が良いでしょう。
話題というのは、問いが鎮座する座敷への玄関口のようなものです。できるだけ多くの人が入れるよう間口を広げると同時に、思わず奥に入ってみたくなるような造作を工夫してみましょう。
4、正しい公式文を作るコツ
公式文をもとに作文テンプレートに代入するとアウトラインが自動表示されます。あとは必要に応じて肉付けしたり、言葉を入れ替えたりして、文章としてスムーズに読めるよう調整を加えていけばいいだけです。しかしながらいざそのようにしようとしてもうまくいかない場合もあります。そうした場合、原因の多くは公式文が不完全なことにあります。
不完全な公式文には次のようにいくつかのパターンがあります。
A、問いが明確でない
ひとつは問いが曖昧で明確でないことです。問いがはっきりしなくてはうまく答えられないのは当然です。
問いが曖昧になってしまうのは、問題意識が明確でないのが原因です。まずは問題意識をはっきりさせた上で、そのうち何が一番問題だと考えているのか、何に一番疑問を持っているのかという具合にさらに問いを掘り下げながら、核心となる問いを浮かび上がらせるようにしましょう。
B、論理的でない
もうひとつは公式文の流れが論理的でないことです。人は何かを理解する際、論理でもって認識するようにできています。そのため、文のつながりが論理的な流れに沿っていないと意味を追うことができなくなってしまいます。
このケースでは、問いが論理的でない場合と、答えが論理的でない場合の二つがあります。後者の場合、「AはBである」というシンプルな文にすることで、論理的かどうかは比較的簡単に見抜けます。二つを並べてAとBとの間に因果関係があるかどうかを確認すればよいのです。
しかし、問題は問い自体が論理的でない場合です。例えば「なぜ犬は猫なのか?」といった意味をなさない問いがこれに当たります。しかし、これは案外厄介で、一定の学術的な訓練を受けた人であっても知らず知らずのうちに論理的でない問いを作ってしまうことは少なくありません。この場合、「どこかに論理的な落とし穴がないだろうか?」という視点から問いをできるだけ客観的に見直すようにしてみましょう。
C、問いの詰め込みすぎ
公式文が不完全になってしまうもう一つの原因は、問いを詰め込みすぎているケースです。
文章というのは、突き詰めていえば問いに対する答えです。その問いと答えのユニットが一定の論理的法則の元に順序よく並べられて提示されるのが文章です。
そしてひとつの文章にはひとつの問いとひとつの答えというのが大原則です。文章を構成する基本単位である文も同様です。ひとつの文には必ずひとつの答えという原則を守らなければなりません。ひとつの文の中に二つも三つも問いがあってはわかりにくくなってしまうのは当たり前です。
したがって公式文がうまく展開できない場合、そこに複数の問いが混在している可能性があります。そうなっていないかどうか、もう一度確認してみるとよいでしょう。
ちなみに問いが複数混在してしまうのは、問いが大きすぎる場合が多いようです。大きな問いというのは通常、より小さな問いからなっています。大きな問いを扱う場合は、一度に答えを出そうとせず、いったん小さな問いに細分化し、それらを整理した上で、順序良く答えを出していくようにするとよいでしょう。
補講1
アウトライン文を作成する際、重要なのは主語と述語を明確にすることです。同時に一文一意とすることです。なるべく「AはBである」というシンプルな文にすべきです。こうすることで文の骨格が安定します。骨格が安定すれば語句を追加してもねじれのないわかりやすい文に仕上がります。
補講2
文章のアウトラインを数式で表してみました。
(導入)
Xについての話題なんだけど
XがAになった
(問いの定式化)
Aとは何か?
Bである
(証明)
その理由は?
AはA’である
A’はBである
ゆえにAはBである
(補足)
(だから〜)※省略可
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。