こんにちは。北軽井沢宣伝研究所所長のタカハシです。
このところキャッチコピーに関する記事を立て続けにアップしていますが、今回もその続きとなります。
本記事で取り上げるのは「単体セールスキャッチコピーの作り方」です。
え、単体セールスキャッチコピーって何よ?
そう思った方、ご安心ください。これは私の造語ですので、知らなくて当たり前です。またその定義については、このあとすぐご説明します。
というわけで、今回はこの単体セールスキャッチコピーの作り方を解説したいと思います。
では早速行ってみましょう!
単体セールスキャッチコピーの定義
単体セールスキャッチコピーというのは、それ単体で商品を買わせる(または人を行動へと促す)ことを目的としたキャッチコピーのことです。
コピーがキャッチコピーとボディコピーのふたつの部分からなり、それぞれ特定の役割を分担していることは他の記事でも繰り返しふれた通りです。
それに対して、単体セールスキャッチコピーはそれひとつでキャッチコピーとボディコピー、両方の役割を果たすことが期待されているコピーです。
つまり、ボディコピーの助けを借りず、見込み客を呼び込み、同時に商品を買わせるという一連の流れをそれひとつで促すコピー、それをここでは単体セールスキャッチコピーと呼ぶことにします。
具体的には、スーパーなどのPOP(店頭プロモーションとしての広告)コピー、通販サイトやチラシの(一部の)キャッチコピーなどがそれに相当します。
単体セールスキャッチコピーはどう作る?
では、この単体セールスキャッチコピーはどう作ればよいのでしょうか?
これについては、人によって様々な考え方、作り方があるかと思いますが、ここでは私が編み出した公式をもとに解説したいと思います。
公式とは?
単体セールスキャッチコピー=キーワード+訴求ポイント
というものです。
ここで「キーワード」というのは、ターゲットが抱えている悩みや課題に関連して連想される言葉のことです。要は「気になる言葉」といってよいでしょう。
また「訴求ポイント」というのは、商品の強みです。その商品だけがもつ魅力であり、他にない特徴のことです。
この公式がどうやって導き出されたのかについてはのちほど説明しますが、ここではその有効性の確認もかね、まずはこれを使ってキャッチコピー(単体セールスキャッチコピー)を試しに作ってみましょう。
スーパーのPOP用キャッチコピーを作るケース
ここでは、スーパーのPOP用キャッチコピー(単体セールスキャッチコピー)を作るケースを想定します。
前提は、次のような設定とします。
販売する商品=サンマ
訴求ポイント=脂が乗って美味しい
キーワード=サンマ、脂の乗った、美味しい、旬、夕食のおかず
以上をもとに公式にあてはめてみると‥
たとえば
ヘルシーなサンマ+脂が乗って美味しい
というキャッチコピーが作れます。
といっても、これでは無機的すぎてキャッチコピーとしての訴求力に欠けますので、もう少し表現を工夫してみましょう。
それがこちらです↓
旬の味覚!脂の乗った絶品サンマ!
いかがでしょうか?
とくにひねったものは何もありませんが、売り場近くを通った人にサンマを買わせるという点では、そこそこ訴求力のあるコピーに仕上がっているのではないでしょうか?
この公式がそれなりに有効であることが確認できた上で、次にそれがどのようにして導かれたのかをみていきましょう。
この公式がどうやって導き出されたのか?
その前にひとつ押さえておくべきことがあります。
押さえておくべきこととは?
それは、「AIDCA」です。
AIDCAというのは、消費者の購買行動プロセスを説明するモデルのひとつです。それによると、消費者はまず商品を認知し (Attention)、興味を抱き (Interest)、ついで欲しいという欲求が喚起され (Desire)、さらにその商品や会社を信用し (Conviction)、最終的に購入に踏み切る(Action)とされています。
一般に消費者は、商品を購入する際、このAIDCAに沿って意思決定を行うとされています。
コピーとAIDCAの関係は?
ここで、キャッチコピーとボディコピーの関係をAIDCAで分析してみましょう。
コピーを見た消費者の心理的プロセスは通常、次のような流れで進んでいきます。
キャッチコピーを読んだ(注目=Attention)消費者は、さらにボディコピーを読んでみようと興味を抱く (Interest)ーー。
ボディコピーを読んだ消費者は、そこで商品への欲求が喚起され(Desire)、またそこに書かれていることが信用に足ると納得し(Conviction)、そして購買行動へと至る(Action)ーー。
こうしてみると、キャッチコピーがAttentionとInterestに、ボディコピーがDesire、Conviction、Actionに、それぞれ対応することがご理解いただけるのではないでしょうか?
先ほど、キャッチコピーとボディコピーはそれぞれ役割を分担しているといいましたが、それはこのAIDCAにあてはめるとよりわかりやすくなります。
単体セールスキャッチコピーは、AIDCAの全段階に対応する
では、これを単体セールスキャッチコピーに当てはめたらどうなるでしょうか?
ここで、単体セールスキャッチコピーはそれ自体でキャッチコピーとボディコピー、両方の役割を担うという先ほどの定義を思い出してください。
ということは?
そうです。
単体セールスキャッチコピーが対応するのは、AIDCAの全段階ということになります。
単体セールスキャッチコピー公式の証明
さて、以上を前提に単体セールスキャッチコピーの公式を導き出してみます。
さきほど、単体セールスキャッチコピーはAIDCAの全段階に対応するものであるといいました。
これは、単体セールスキャッチコピーには、AIDCAの全段階がその要素として含まれていなければならないことを示しています。
等式でいえば、単体セールスキャッチコピー=AIDCAということです。
ここでAIDCAをAI+DCAとふたつに分けてみます。
このうちAIは、Attention(注目)とInterest(興味)でしたね。
AIはキーワードに対応する
このAIは具体的には何に相当するのでしょうか?
結論を先に言いますと、キーワードに相当します。
なぜそうなのでしょうか?
さきほどキーワードは、「気になる言葉」であると言いました。
では、「気になる」というのはどういう心理でしょうか?
それは、何らかの悩みや課題が心の中にあり、それに関連する言葉に対して自然と目が行き、興味が湧き上がるということです。
たとえば、「眠りが浅い」という課題をもつ人は、「浅眠」「寝不足」「枕」「安眠」「布団」「寝起き」といった言葉に対してより敏感に反応するはずです。
ということは?
そうです。「気になる」というのは、まさにAttention(注目)とInterest(興味)の働きのことです。
すなわち「気になる言葉」であるキーワードに対応するのはAIである、ということになります。
DCAは訴求ポイントに対応する
では、DCAは何に対応するのでしょうか?
さきほど訴求ポイントは、商品の強みであるといいました。では、ここでいう強みとは一体なんでしょうか?
それはターゲットが抱えている悩みや課題に対する有効な解決策であるということです。
つまり、訴求ポイントというのは、その商品がどう解決策になるのかをわかりやすい言葉で示したものです。
たとえば、「眠りが浅い」という課題に対して「腕の良い枕職人が作るオーダーメイド枕」が解決策になる場合、「熟練の枕職人が一つひとつ身体に合わせて作る」などが訴求ポイントになるでしょう。
そして、この訴求ポイントがAIDCAでいうDCA(とくにD)に対応する要素になります。
なぜそうなるのでしょうか?
こちらも同様に、DCAが何であったかを思い出してください。
DCAとは、Desire(欲求)、Conviction(興味)、Action(行動)でしたね。
ここでDesireというのは、(商品を)欲しいと思わせる要素です。
では、欲しいと思わせる要素とは一体何でしょうか?
それは解決策です。
悩みや課題を解決したがっている人にしてみれば、解決策こそがその商品を入手する最大の動機となることはいうまでもないでしょう。
つまり、
Desire(欲求)=解決策
ということです。
これにさきほどの
訴求ポイント=商品の強み=解決策
を合わせると
Desire(欲求)=解決策=商品の強み=訴求ポイント
という等式が成り立ちます。
すなわち、訴求ポイントはDesire(欲求)に対応する要素になりうる、ということです。
またConviction(確信)とAction(行動)も訴求ポイントになりえます。
たとえば、商品知識はあるものの、その店で買ってもよいのかいまひとつ確信が持てない、あるいは価格が高すぎて予算的に折り合わず、買うのを躊躇していたような場合です。
そのような場合、販売者の信用情報(=Convictionに対応します)や価格の値引き(Actionに対応します)などを訴求ポイントとすることで、購買を促すことが可能になります。
これらのことから、訴求ポイントはAIDCAでいうDCAに対応するものであると結論づけることができます。
結論:単体セールスキャッチコピー=キーワード+訴求ポイント
さて、以上から
AI=キーワード
DCA=訴求ポイント
という等式が得られます。
これと
単体セールスキャッチコピー=AIDCA
を合わせると
単体セールスキャッチコピー=AIDCA=AI+CA=キーワード+訴求ポイント
という等式が得られます。
そしてここから
単体セールスキャッチコピー=キーワード+訴求ポイント
という公式が導かれることになります。
以上から、単体セールスキャッチコピーは、キーワード+訴求ポイントという公式を使えば比較的簡単に作れることがご理解いただけたのではないでしょうか?
まとめ
キャッチコピーを一から考えるのはなかなか骨の折れる作業です。
けれど、ここに紹介した公式を使えば誰でも簡単に効果的なキャッチコピーが作れるようになるはずです。
キャッチコピーづくりに悩んだ時はこの公式を思い出してください。
それは、知的創造という森で迷子になっている人にたしかな方向を指し示してくれることでしょう。
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。