口コミはたんなる増幅装置です。それは特定の条件を満たせば発生するたんなる社会現象です。たとえ肯定的な口コミが多いとしても、それだけでそれが本当に価値あるものであるかは判りません。口コミの多さがその価値を証明するわけではないからです。世に知られず、埋もれているものの中にも良質なものはいくらでもあります。集合知は(少なくともいまのところ)必ずしも真理を導くとは限らないのです。
では、その不完全な集合知を補完し、よいものがよいものとして、また粗悪なものが粗悪なものとして公平かつ客観的に評価されるようにするにはどうすればよいのでしょうか? 私は、そこにこそ広告が果たすべき本来の役割があるのではないかと考えています。
本来、全てのサービスに対しその価値に応じた市場プレゼンスを提供することこそが真の広告の役割ではないかと考えているからです。
そのひとつの方向性として私が考えているのが、広告→検索エンジン→レコメンドAIという進化の道筋です。この図式が示すように広告は企業の代弁者から生活者の代弁者へとスタンスを180度変える必要があります。
未来の広告は個人専用のレコメンドAIロボットのような役割になるのではないでしょうか。漫画のドラえもんはまさにそれを具体化させたものといえるかもしれません。
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。