これで納得!コンセプトの本当の意味とその作り方

商品コンセプト
ショップコンセプト
デザインコンセプト
広告コンセプト

等々‥。

ビジネスに関わっている人であれば、コンセプトという言葉は一度ならず見聞きしたことがあるはず‥。

けれど、コンセプトってどういう意味、とあらためて訊かれると言葉に詰まってしまう人も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、コンセプトとは何か、それはどうやって作ればよいのか、についてできるだけわかりやすく解説してみました。

最後までお読みいただけば、今までわかったようでわからなかったコンセプトという概念がより明確になると同時に、その作り方についてもこれまで以上に明確な指針が得られるはずです。

コンセプトとは?

そもそもコンセプトとはいったい何を意味するのでしょうか? ためしに辞書を調べてみると「概念」または「観念」と書いてあります。

とはいえ、これだけではさっぱりわからないので、もう少し詳しい辞書をみてみると、「広告、作品、工業製品、店舗、料理など、何らかの意図を込めて制作される物を作る際に基調とする考え方。またそれらを制作する際、終始一貫してブレることのない基本的な方向性のこと」とあります。

センセー!わかりませ〜ん!

そうですよね。これじゃあ、やっぱりよくわからないですよね‥。

そこで、百聞は一見に如かず、まずは実際にコンセプトがどのように使われているのかを確認するところから始めましょう!

ということで、以下、実際に使われているコンセプトを試しにいくつか挙げてみます。

なかにはコンセプトというよりキャッチフレーズといった方がよいものもありますので、それらについては別途、たぶんこれがコンセプトだろうと思われるものを書き添えました。

ディズニーリゾート

夢の国

スターバックス

第三の場所

アスクル

事務用品が明日届く

QBハウス

10分の身だしなみ

ライザップ

結果にコミット(←キャッチフレーズ)
痩せられることを保証する(←コンセプト)

ルンバ

お掃除ロボット

i-pod

1000曲をポケットに

ウイダーインゼリー

10秒チャージ(←キャッチフレーズ)
10秒で摂れる栄養ゼリー(←コンセプト)

チュアブルサプリ

かんでおいしい(←キャッチフレーズ)
摂取しやすくおいしいサプリ(←コンセプト)

いかがでしょうか?

今度は感覚的な部分だけでもつかめましたでしょうか?

え? 全然?

そうですよね(笑)

では、もう少し突っ込んで説明してみましょう。

最初に結論からいいますね。

コンセプトとは、課題に対する解決策のことです。

お客様が抱えているなんらかの課題に対する解決策ーーそれがコンセプトという言葉がもつ本当の意味です。

なぜそういえるのでしょうか?

広告などビジネス分野が発祥とされていることからもわかるように、コンセプトはもともとなんらかの課題を解決するための手法、または方向性という意味で使われてきたものだからです。

このあたりはきちんと説明していると長くなりますので、ここも百聞は一見に如かず方式でいきましょう。

というわけで、論より証拠! この定義に従えば、いくつもあるコンセプトはそれぞれ次のようにすっきりと表現できます。

商品コンセプト

市場が求めている課題に対する解決策(となる商品のありかた)

ショップコンセプト

顧客満足(または売上最大化)のための解決策(となる店舗のありかた)

広告コンセプト

広告目標を達成するための解決策(となる広告のありかた)

デザインコンセプト

デザイン目標を達成するための解決策(となるデザインのありかた)

企業コンセプト

顧客が抱える課題の解決策(となる会社のありかた)

課題とその解決策ととらえるとわかりやすくなるよ!

このように定義し直すと、それまでのもやもやした霧が晴れ、そこにある本質的な部分がかなり明瞭になってきたのではないでしょうか?

ここで再度、先ほど挙げた具体例に戻り、この定義をもとに簡単な説明を加えてみます。

ディニーリゾート

コンセプト

夢の国

課題

日常生活の空虚さを埋めたい

解決策

「夢の国」のような非日常的な体験を提供する

スターバックス

コンセプト

第三の場所

課題

会社でも家庭でもくつろぐ場所がない

解決策

会社でも家庭でもない「第三の場所」を提供する

ウィダーインゼリー

コンセプト

10秒チャージ(10秒で摂れる栄養ゼリー)

課題

忙しくて食べ物を摂る時間もない

解決策

どこでも素早く摂取できる栄養源を提供する

いかがでしょうか?

こうした観点からあらためて眺めてみると、これらはいずれも考え抜かれた完成度の高いコンセプト(およびそこから導かれたキャッチフレーズ)であることがおわかりいただけるのではないでしょうか?

コンセプトと似た言葉 その違いは?

次に、コンセプトと似た言葉について比較検討してみましょう。

コンセプトと似た言葉には、次のようなものがあります。

テーマ

テーマは一般に物語や絵画などの芸術作品の基調となる考え方という意味で使われます。「主題」といわれることもあります。要するに作品を通して制作者が「伝えたいこと」です。

たとえば、

金融の未来をテーマに議論する

といった使われ方をします。

しかし、これを

金融の未来をコンセプトに議論する

といったらどうでしょうか?

ちょっとというか、かなり違和感がありますよね?

なぜ違和感があるのでしょうか?

これは例の「コンセプト=解決策」という視点からみるとわかりやすいと思います。

ここでコンセプトを解決策と置き換えてみます。

金融の未来を解決策に議論する

これはどう考えてもおかしいですよね? 日本語になっていないですよね?

ここからわかるように

金融の未来をコンセプトに議論する

に違和感があるのは、コンセプトが「解決策」という意味で使われる言葉だからです。

一方、

金融の未来をテーマに議論する

には違和感がありません。

これは単純に

金融の未来を主題に議論する

という意味だからです。

理念

理念は、「こうあるべしという考え方」です。通常、経営する上での理想的なありかたといった意味で会社などでよく使われます。

このように理念は、「解決策」を意味するコンセプトとは本来、明確に異なるのですが、実際には、きっちり区別するのは難しいようです。

たとえば

お客様第一を理念とする会社

お客様第一をコンセプトとする会社

こうしてみるかぎり、どちらもそれほど違和感はありません。

なぜ違和感がないのでしょうか?

それは会社自体に解決策を提供するところ、という意味があるからです。

そのため、ここで理念の代わりにコンセプトをもってきてもとくに違和感がないのです。

一方、これが

憲法の理念を尊重する

憲法のコンセプトを尊重する

となると後者は違和感があります。

憲法には何かを解決するという意味が比較的薄いからです。

以上から、結論としては

解決策としての意味があるとき→コンセプトが使える

解決策としての意味がないとき→コンセプトが使えない

と覚えておくとよいでしょう。

コンセプトがなぜ重要なのか?

ここで、コンセプトがなぜそれほど重要なのか、についても説明しておきたいと思います。

コンセプトが重要である理由には、いくつかありますが、なかでも最大のそれは

目指すべき方向が明確になる

ということです。

コンセプトがあるとなぜ「目指すべき方向が明確になる」のでしょうか?

理由は簡単です。それがあることによって、誰の課題に対してどんな解決策を提供するのか、という構図が明確になるからです。

では目指すべき方向性がわかるとどんなメリットがあるのでしょうか?

1.チームをひとつの方向に引っ張っていくことができる

まず挙げられるのは、チームをひとつの方向に引っ張っていけるということです。

方向性が明確であれば、チーム全体がどこに向かっているのか、向かうべきなのかを全員が共有することができます。

また、担当する部署が分かれていても部署間で方向性が食い違うこともなければ、それをめぐっていちいちすり合わせる必要もなくなります。

そのため、たとえ強力なリーダーシップが得られない場合でも、ひとつの目標に向かってチームが自律的に動くことができるようになるのです。

2.顧客満足につながる

もうひとつのメリットは顧客満足につながることです。

これも理由は同じです。顧客に対して社員がいま何をすべきか、何を優先して対応すればよいかが誰にいわれなくてもわかるからです。

そのため、社員一人ひとりが顧客が求めているものを速やかに提供できるようになり、結果として顧客満足度が高まることになるのです。

3.成功確率が高まる

みっつ目のメリットは成功確率が高まることです。

なぜ成功確率が高まるのでしょうか? その理由は正しい的を狙えるからです。

そもそもコンセプトを作るにあたっては、ニーズ(課題を解決したいという思い)はどのくらいあるのか、またその解決策はどれだけの成果を挙げられるのかをきちんと予測した上で行うことになります。

これは、いわば狙うべき的を明確にし、照準を合わせる作業といえるでしょう。

すなわち、コンセプトを明確にするというのは狙うべき的を明確にすることであり、そして、それは当然ながら成功確率を高めることにつながります。

コンセプトの作り方

さて、このコンセプトですが、どうやって作ればよいのでしょうか?

先にコンセプトとは課題に対する解決策であるといいました。

ということは、コンセプトを作るとはすなわち課題と解決策を明らかにすることといえるでしょう。

そして、そのうちとくに解決策の部分を指してコンセプトと呼ぶのが一般的です。

したがって、コンセプトを作るにあたっては、課題と解決策を、とくに解決策を明らかにすることが最大の目標になります。

その具体的なやりかたは次のとおりです。

以下、それぞれについて見ていきます。

課題の洗い出し

最初にやるべきことは課題の洗い出しです。そもそも課題が何なのかわからなければ解決策は導き出しようがありません。その意味で、これは当然かつ不可欠の作業といえるでしょう。

なおその際、明確にしなければならないのは、それは「誰の課題なのか?」と「どんな課題なのか?」というふたつの問いです。

誰の課題なのか?

ここでいう誰というのは、課題を抱える生活者です。マーケティング用語でいえばターゲットユーザーです。

ここでは課題を抱えているターゲットユーザーがどのような人物なのかを特定します。

「誰」の例(ディズニーリゾートの場合)

日常生活に飽きている人

どんな課題なのか?

次にそのターゲットユーザーが抱える課題を特定します。課題というのは、ターゲットユーザーが困っていること、また片付けなければならない「仕事」であるにもかかわらず自分ではできないことです。

ここではその課題を特定します。

課題の例(ディズニーリゾートの場合)

日常生活の空虚さを埋めたい

解決策の発見

課題が明らかになったら、次にその解決策を導き出します。

その際、二つの視点から考えるとよいでしょう。

ひとつは、自社の強みという視点です。

まずはターゲットユーザーの課題に対して自社はどんな解決策を提案できるのかを探りましょう。徹底的に探ったら、そこで浮かび上がった候補をリストアップします。

ふたつめは差別化という視点です。

たとえ解決策がターゲットユーザーにとって満足いくものであったとしても、他社と同じでは意味がありません。企業としてそれを提供する場合、同じ土俵に立ってしまっては競争戦略上、有利ではないからです。

そのため、ここでは前段階で挙がってきた解決策リストの中から他社が提供できないもの、たとえできたとしても相対的に自社が競争優位にあるものを選びます。

それがここで提供すべき解決策になります。

解決策の例(ディズニーリゾートの場合)

どこにも真似できない非日常体験を提供する

言語化

最後にここで導き出された解決策を言語化します。言語化というのは、意味を凝縮してシンプルな言葉に直すことです。

そうして出来上がったシンプルな言葉がコンセプトになります。

言語化の例(ディズニーリゾートの場合)

魔法の国

なおその際、必要に応じて解決策だけでなく課題を含めてもよいでしょう。場合によってはさらに「誰の(課題)」であるかを含めてもよいかもしれません。

また、ここでのコンセプトは洗練された表現でなくてもかまいません。最低限、関係者が理解できるものであればコンセプトとしての機能はそれで十分果たせるからです。

ちなみにコピーやキャッチフレーズは、このコンセプトをもとにその目標に沿って言葉のプロであるコピーライターが表現を練り上げたものです。

もちろんそれぞれ「コピー(キャッチフレーズ)目標を達成するための解決策」としてのコピー(キャッチフレーズ)に変形されることはいうまでもありません。

課題を解決することで誰にどんな風になってもらいたいかという形式ーー「こうなれば」「こうなる」ーーをそのまま言語化するとセールスコピーのキャッチコピーになるよ。

たとえば「飲むだけで痩せる!」なんてのは、そのものズバリだよね。

マーケティング手法が役に立つ

コンセプトを作るにあたってはマーケティングの考え方が役に立ちます。

というのもマーケティングは課題解決のための手法でもあるからです。

じつは上で示したコンセプトの作り方の裏にもマーケティングの方法論が隠れています。

3C分析です。

3C分析というのはマーケティング環境を分析するフレームワークで、「Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」の3つの頭文字を取ったものです。

上で説明したコンセプトの作り方(課題の洗い出し・解決策の発見)を3C分析にあてはめると、次のようになります。

3C分析による課題の洗い出し

「誰(のどんな課題)」を明確にするというのは「カスタマー」の領域を明確にすることです。図でいえば他の円との重なりを含むピンク色の部分です。

3C分析による解決策の発見

「自社の強み」を明確にするというのは、自社とカスタマーとの重複部分を明確にすることです。すなわちA+Bの部分が自社にとって強みを活かせる領域になります。

ただし、ご覧のとおり、Bの部分は競合とかちあわせになってしまいます。そのまま勝負をしたら消耗戦になってしまいます。

なのでBの部分での勝負は避けなければなりません。これが「差別化」という考え方です。

では自社の強みを活かせて、なおかつ競合とかぶらないのはどこでしょうか?

いうまでもありませんね。Aの領域です。

ここから、コンセプトとしてふさわしいのはAの領域だということがわかります。

このようにコンセプトを作る際は、3C分析という視点から考えるとよりわかりやすくなります。

コンセプトを作るというのは、要するにこのAの領域を明確にすることなんだね。

またそれぞれの項目を深掘りする際に役立つマーケティング手法もあります。

カスタマー

誰の課題

ここではターゲットユーザーを明確化することが目標になります。ターゲットユーザーを明確化する上で役に立つマーケティング手法には、STP分析やペルソナ分析などがあります。

どんな課題

ここではターゲットインサイトを発見することが目標になります。ターゲットインサイトを発見する上で役に立つマーケティング手法には、インサイト分析やジョブ理論などがあります

カンパニー

自社の強み

ここでは自社の強みを明確にすることが目標になります。自社の強みを明確にする上では、SWOT分析などが役に立ちます。

コンペティター

差別化

ここでは差別化のポイントを発見することが目標になります。差別化のポイントを発見する上では、マイケル・ポーターの競争戦略やUSPなどが参考になります。

こうしてみると、マーケティングとはコンセプトを導くための方法論といっても過言ではないのかもしれませんね。

まとめ

最後にまとめておきます。

コンセプトは、課題とその解決策、とくに解決策を一言で表したものです。

それがなぜ重要なのか、といえば、目指すべき方向性が明確になるからです。さらにそれによって「チームをひとつの方向に引っ張っていける」「顧客満足につながる」「成功確率が高まる」といったメリットが生まれるからです。

その作り方は、課題の洗い出しと解決策の発見というふたつのプロセスからなります。その際、マーケティング手法が役に立ちます。

混同しやすいのですが、コンセプトとキャッチフレーズ、広告コピーは別物です。

キャッチフレーズや広告コピーはコンセプトをもとに作られるものです。

コンセプトが根っこだとすれば、キャッチフレーズや広告コピー(さらにスローガン、タグラインなど)はそこから生じた幹であり、枝葉のようなものです。

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