見込み客を振り向かせるため、一方的な宣伝広告を数多く打つのが定石とされてきたこれまでのマーケティングーー。しかし、それでは人の都合もお構いなしに部屋へ土足で上がり込むようなもの。そうした押し付けがましい旧来のやり方に対する反省の上に立ち、これからの新しいマーケティング手法として注目を集めているのが、コンテンツマーケティングです。
ここでは、そのコンテンツマーケティングに欠かせないコンテンツライティングについて、その書き方を解説します。
コンテンツライティングとは?
検索エンジン上での上位表示を獲得すると同時に、そこで集めた見込み客を目的とする行動へ導くためのマーケティング手法であるコンテンツマーケティングーー。コンテンツライティングは、そのコンテンツマーケティングで使われる文章、およびその書き方のことです。
似たような言葉にSEOライティングがあります。大枠ではほぼ同じものなのですが、当然ながらそこには若干の違いがあります。それは、SEOライティングの場合、主目的が検索エンジンでの上位表示にあるのに対し、コンテンツライティングは同じく検索エンジン上位を目指しながらもユーザーに特定のアクションを誘発させることを最終目的とするところです。
その意味でコンテンツライティングは、読者に購入を促すセールスライティングにも似ているといえるでしょう。
したがってコンテンツライティングは、SEOライティングとセールスライティングの中間に位置し、両者の特性を掛け合わせたものという見方もできるかもしれません。
コンテンツライティングの目的は?
さて、このコンテンツライティングですが、そこにはふたつの目的があります。
ひとつは見込み客を集めること(集客)、もうひとつは問い合わせなどなんらかのアクションを促すこと(CTA=Call to Action)です。
したがって、コンテンツライティングには、これらふたつの目的を達成するための要素が必ず含まれていなければなりません。
では、その目的を達成するために必要な要素とは一体なんでしょうか?
まずは集客についてそれを見ていきましょう。
集客
見込み客を集める上でもっとも重要な施策はSEOです。いわゆる検索エンジン対策です。
検索エンジン対策というのは、特定のキーワードで上位表示されることです。
したがってコンテンツライティングにおいては、なによりもまずSEOを意識したライティングが必要になります。
ではSEOを意識したライティングとは具体的にどんなものなのでしょうか?
キーワード戦略の徹底
SEOを意識したライティングで重要なのは、キーワード戦略の徹底です。
キーワード戦略というのは、ユーザーがどのキーワードで検索するのかを調べ、それにそったキーワードで記事を上位表示させることです。
なぜそうするのかといえば、そうしないとせっかく書いた記事が検索エンジンで上位表示されないからです。検索エンジンで上位表示されないとユーザーは記事の存在に気づけないので、当然、アクセスも期待できないことになります。
したがってコンテンツライティングにおいてはなによりもまずキーワード戦略を徹底させる必要があります。
このキーワード戦略の具体的なやり方については、のちほど詳しく説明いたします。
専門性のある記事を書く
SEOを意識したライティングを行うためのもうひとつのポイントは、専門性の高い記事を書くことです。
なぜそうしなければならないか、といえばGoogleがそれを推奨しているからです。Googleには、「10の事実」という有名な企業哲学がありますが、そのひとつに「ひとつのことをとことん極めてうまくやるのが一番」というフレーズがあります。これは要するに専門性の高いコンテンツを上位表示しますよ、というGoogleの検索ポリシーを宣言したものといえます。
ここからもわかるように、検索エンジンで上位表示されるためには、コンテンツ自体が専門性の高いものであること、すなわち中身の濃いものである必要があります。
一定以上の文字数をもつ記事
もうひとつのポイントは、一定以上のボリュームのある記事を書くことです。
ひと昔前なら1000文字程度でも上位表示は可能でしたが、サイトの数が増加し、競争が激しくなった現在、それだけの文字数では到底足りません。キーワードにもよりますが、できれば最低でも3000文字はほしいところです。
SNSでのシェアを意識する
記事への流入経路は、検索エンジンばかりでなく、SNSからのそれもあります。とくに近年は、SNS上でシェアされた結果、アクセスが増える傾向にあります。そのため記事を書く際は、SNSなどでシェアされることーーいわゆるバズるーーを意識する必要があります。
バズらせるための工夫にもいろいろありますが、そこまで触れると話が広がりすぎてしまいますので、ここでは割愛させていただきます。
アクション促進
コンテンツライティングに求められるもうひとつは、問い合わせなどなんらかのアクションを促すための要素です。いわゆるCTA(Call to Action)です。
アクションを促すための要素を考える際、参考になるのがセールスライティングです。
セールスライティングとはその名の通り、「商品を売ることに特化したライティング」です。ここで商品を買ってもらうことをひとつのアクションとみなせば、このセールスライティングはまさにアクションを目的としたライティングの典型であるといえるでしょう。
そして、ということはアクションを促す文章を書きたいのであれば、セールスライティングを参考にすればよいということになります。
では、セールスライティングにおけるアクション促進のための手法とは一体どんなものなのでしょうか?
ベースとなるのは、AIDCAです。
AIDCAとは?
AIDCAというのは、消費者が商品を購入する際にたどる心理プロセスを説明するための古典的なモデルで、古典的とはいえマーケティング、とくに広告制作の現場においてはいまもなお活用されている実践的な戦略フレームのひとつです。
それによると、消費者は商品を知る場面から購入に至るまで、「Attention(注目)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Conviction(確信)」「Action(行動)」という5つの段階をたどるとされ、たとえば広告制作においては、それぞれの段階に対応した表現要素を織り込むことが不可欠とされています。
このうちDesire(欲求)、Conviction(確信)、Action(行動)の三つがセールスライティングにおいてとくに重要とされています。以下、それぞれについてもう少し掘り下げてみます。
Desire(欲求)
まずDesire(欲求)です。
Desire(欲求)というのは「その商品が欲しい!」と思うようにさせることです。広告でいえば、説明文(ボディコピー)を通して購入意欲を掻き立てるということです。
コンテンツライティングにおけるDesire(欲求)も同じです。コンテンツライティングの目標も、記事を読んで、(自分が抱えている課題を解決するために)ここに依頼したいと思わせることにあります。
しかし、具体的にはどうすればよいのでしょうか?
それは「解決のヒントを提示すること」です。ユーザーが抱える悩みに対する解決の方向性を明確に指し示してあげることです。
忘れてならないのは、あなたが書いた記事を読んでいるのは、解決すべきなんらかの課題をもったユーザーであり、彼ら彼女らはそれを解決するヒントを求めてアクセスしてきたということです。
これが何を意味するのかといえば、ユーザーにとってここでの最大の関心事は、自分の問題を解決する上でこの記事が役に立つかどうかの一点にあるということです。
ということは、その解決の方向性が明確に示されていれば、「ここに相談すれば解決できそうだ」とユーザーに期待を抱かせることが可能になるはずです。
したがって、コンテンツライティングの記事を書く際、なにより重要なのはユーザーが抱える課題を解決するためのヒントに焦点を当てることといえるでしょう。
Conviction(確信)
次はConviction(確信)です。
Conviction(確信)というのは、消費者が商品を欲しいと思った上で、その商品の品質やそれを提供する企業に対しても「間違いない」と信頼することを意味します。
コンテンツライティングにおいても、このConviction(確信)はきわめて重要です。というのも、アクションを促すというのは、ある種の説得であり、説得にはその大前提として信頼関係が不可欠だからです。そして、ユーザーとの間にこの信頼関係を築くのが、Conviction(確信)という手法です。
では、どうしたらユーザーとの間に信頼関係を築くことができるのでしょうか?
ここでヒントになるのは、カウンセリングの手法です。なかでも、参考になるのがラポール形成です。
ラポール形成
ラポールというのは、心が通じ合うという意味のフランス語から来た言葉ですが、臨床心理学ではセラピストとクライアントとの間の信頼関係を意味しています。ラポール形成というのは、その信頼関係を築くことです。
このラポール形成は、カウンセリングにおいてはきわめて重要です。なぜならラポールが形成されないとセラピストとクラアントとの間の意思疎通が十分に行えないからです。意思疎通が十分に行えなければもちろん治療効果も期待できません。
これはコンテンツライティングにおいても同様です。いくら美辞麗句を連ねても、それだけでは読者の心の琴線に触れることはできません。そこにはコミュニケーションを成立させるために必要なラポールが欠けているからです。
したがって、コンテンツライティングにおいては、なによりもまず読者との間に信頼関係を築くことが重要になります。
では、そのための具体的な手法にはどんなものがあるのでしょうか?
ここでも参考になるのは、カウンセリングの手法です。
傾聴
ひとつ目は、傾聴です。
傾聴というのは、相手が話したいことに丁寧に耳を傾けることです。もちろんコンテンツライティングは書き手から読者への一方通行のコミュニケーションであり、チャット機能でもあれば別ですが、通常、実際に読者と対話することはありません。したがって、文字通り読者の話に耳を傾けることはできませんが、似たような効果を出すことは可能です。
たとえばひとつの方法として、読者の目線に沿った記事構成にすることが考えられます。一方的に専門的な知識を披露するのではなく、読者が抱える課題に寄り添いながら、それを一緒に解きほぐしていくような記事構成にすることです。
また、Q&A形式にするのも良い方法です。的を射た質問例を提示することは「この人は私の悩みを理解している」という印象を与えることになります。
さらに、あとで説明するペルソナをきちんと設定することも傾聴の効果を出す上で欠かせない重要な作業です。ペルソナがきちんと設定されていれば、それだけ読者のツボにはまる記事が書けるからです。そして、ツボにはまる記事であればそれだけ、読者の心のなかに「この人(会社)は自分のことを理解してくれている!」という感覚が生まれます。
ミラーリング
ふたつ目は、ミラーリングです。
ミラーリングというのは、相手のしぐさや言動を鏡のように真似することで、相手に好感を抱かせる心理テクニックです。
コンテンツライティングでいえば、読者が気になっている言葉ーーキーワードや共起語ーーを意図的に多用することがそれにあたるでしょう。
気になる言葉が文中で繰り返し登場すると、それが一種のミラーリング効果を生み、「この人は自分の悩みをよく理解している」と読者が筆者に対して好感を抱くことが期待できます。
これはいわば、心のしぐさを真似るミラーリングといえるでしょう。
ペーシング
もうひとつは、ペーシングです。
ペーシングとは、相手の話すスピードやリズムに合わせることです。ウマが合うといいますが、人は波長が合う人に自然と惹かれるものです。
コンテンツライティングの場合、これは読者の目線に降りて、やさしく語りかけるようにわかりやすい文体で書くことに相当するでしょう。
Action(行動)
次にAction(行動)について見ていきます。
Action(行動)というのは、買う直前まで来てなおも迷っている人の背中を押してあげる、またはハードルを下げるなどして、行動を促すことです。
それにはふたつの手法があります。
敷居を低くする
ひとつは敷居を低くすることです。
具体的には先ほどConviction(確信)のところで述べたように「読者の目線に降りて、やさしく語りかけるようにわかりやすく書く」という手法です。いくら専門的で中身のある文章でも、高みから見下ろすような文章では、読者からすると敷居が高く、相談しようという気が萎えてしまうものです。
コンテンツライティングの筆者はどこか遠いところにある偉い人ではなく、身近な頼れる人になる必要があります。
背中を押す
Action(行動)を促すもうひとつの手法は背中を押すことです。
迷っている人の背中を押すには、成功した未来像を提示することが効果的です。具体的な手法としては、成功事例を紹介することなどがそれに相当するでしょう。
以上、コンテンツライティングに求められる要素について説明しました。
次からは具体的な書き方について説明します。
コンテンツライティングの書き方
さて、このコンテンツライティングですが、具体的にはどのようにして書いたらよいのでしょうか?
手順は次の通りです。
1、キーワード選定
2、ペルソナ設定
3、コンテンツ決定
4、執筆
キーワード選定
コンテンツライティングで、最初に行わなければならないのは、キーワード選定です。
いうまでもありませんが、コンテンツライティングは見込み客をネットで集めるためのライティング手法です。一方、先ほどキーワード戦略のところでも触れたように見込み客を集めるためにはSEO対策が不可欠です。そして、このSEO対策の要となるのがキーワード選定です。
したがって、コンテンツライティングにおいてはなによりもまず適切なキーワードを選ぶことが先決となります。
では、このキーワード選定でポイントとなるのは一体なんでしょうか?
それは競合状況の把握です。
アクセス数の多いいわゆるビッグキーワードはもちろん上位表示されれば多くのアクセスが見込めますが、その反面、競合も多くなります。
一方、スモールキーワードはアクセス数は少ないものの上位表示は比較的容易です。
どちらを狙うかは戦略にもよりますが、一般的にいって、いきなりビッグキーワードを狙うのはおすすめできません。最初はスモールキーワードからはじめ、徐々にミドルキーワード、そしてビッグキーワードと、段階を追って上を狙うのがよいでしょう。
ペルソナ設定
キーワードを選定すると同時にペルソナを設定する必要があります。
ペルソナというのは、もともとユング心理学の用語で、マーケティングの世界では「典型的なユーザー像」という意味で使われています。その典型的なユーザー像を仮想的に設定したモデルをペルソナと呼んでいます。
ペルソナを設定することで、ターゲットユーザーがどういう人物で、どんな問題を抱えてこの記事にアクセスしたか、またそれに対してどのようなコンテンツを提供すればよいかが、より具体的に見えるようになります。
コンテンツ決定
次はコンテンツ決定です。具体的にどんな記事を書くのか、その構想を練る段階です。
では一体どんなことを書けばよいのでしょうか?
それはペルソナが知りたいことです。多くの場合、ペルソナは何らかの課題を持ち、それを解決したいと思ってアクセスしてきます。したがって、そこではその解決法、またはそのための糸口となるヒントを書くのが正解、ということになります。
具体的には、次のような作業になります。
1、キーワードを中心にペルソナが知りたいであろう疑問を洗い出す
2、それらを見出しとしてアウトラインを作成する
執筆
次は執筆です。
書くべきコンテンツが決まったら、次はそれを具体的な文章として書き出します。
やり方は次の通りです。ここは今述べたコンテンツ決定におけるそれに続く工程となります。
3、見出しを「問い」ととらえ、それに対する答えを書いていく
4、必要であれば、導入部とまとめを追加する
一般に何かについて説明する記事では、導入部はなくてもかまいません。結論を知りたくてアクセスした読者にとってまどろっこしい前置きはむしろ邪魔でしかないからです。
まとめについても同様です。とってつけたようなまとめなら、とくになくても問題ありません。ただし、問い合わせフォームなどのCTA(Call to Action)部分はコンテンツライティングである以上、不可欠です。必ず目につくところに設置しておきましょう。
具体的なライティング方法については、こちらにより詳細な記事がありますので、参考になさってください→webライティングとは? その具体的な書き方とコツ
チェック
書き終わった文章は必ずチェックしましょう。
チェックする際のポイントは次の4点です。
誤字脱字はないか?
いくら内容がよくても、誤字脱字があってはせっかくの力作も台無しです。少しでも不安に思う語句はおっくうがらず必ず確認するようにしましょう。
表現でおかしいところ、わかりにくいところはないか?
すらすら書けたと思っても読者の視点に立って再度読み返してみると案外、わかりにくかったり、過不足な表現があるものです。それらをよりわかりやすい表現に修正しましょう。
読者が共感できるかどうか?
読者の立場になって、全体的に共感できるかどうかをチェックしましょう。もしできないところがあれば表現を変えるなどして、読者が共感できるようなものに修正します。
いうまでもありませんが、反感を抱かれるような表現はご法度です。反感を抱かれるような表現がひとつでもあるとそれまでの努力がすべて水の泡になってしまいます。そのような不適切な表現がないかどうか、常に読者目線から厳しくチェックする癖をつけましょう。
時間を置いてから見直す
文章を見直す際はある程度、時間を置いてからそうすべきです。というのも、書いた直後は、ある種の興奮状態にありますので、客観的な判断が困難だからです。できれば最低でも一晩は寝かせてから見直すようにしましょう。
SEO重視かユーザー重視か?
最後にコンテンツライティングならではの問題について触れておきます。
コンテンツライティングでよく話題に上るのは、SEOを優先すべきか、内容を優先すべきか、という問題です。
Googleの検索ポリシーからすれば、本来、内容がよければ自動的にSEOとしても優れているということになるのですが、実際にはこちらを立てればあちらが立たず、という部分が少なくないのが現実だからです。
では、コンテンツライティングにおいてはどちらを優先すべきなのでしょうか?
これは人によりいろんな考えがあるかもしれませんが、私は内容が優先されるべき、と考えています。
理由は単純です。コンテンツライティングはその名の通り、コンテンツ=内容を重視するライティングだからです。
これがいわゆるSEOライティングであるなら、もちろん、SEOが優先されるべきでしょう。けれどコンテンツライティングは、あくまでもコンテンツが優先されるライティングです。
したがって、コンテンツライティングにおいてコンテンツを優先すべきなのは、理の当然といえるでしょう。
とはいえ、もちろん、SEOを無視してかまわないと言っているわけではありません。コンテンツに十分、力を注いだ上で、さらにSEOにもできるだけの力を注ぐべきです。要するにどちらにも偏ることなく、両立させるのが理想ということです。
まとめ
情報化が進む中、情報の価値は今後ますます高くなってくることは間違いありません。その一方で、どこにでもあるようなジャンク的な情報の価値は急激に低下していくことでしょう。
真に価値ある記事が書けるコンテンツライターへのニーズは今後ますます高まっていきます。
この記事が、これからコンテンツライターをめざす方、またすでにコンテンツライターをやっているけれどもう少しスキルアップしたいという方に、そのためのヒントを提供出来たなら幸いです。
ライティング力を高めるには?
おまけとしてライティング力を高めるためのお役立ち情報を追加しておきます。
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この記事を書いた人
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。