世の中には多くのホームページがあります。なかには、よほどお金をかけて作ったと思われる、いかにもおしゃれなデザインの、いわゆる「かっこいいサイト」も少なくありません。しかしそれだけかっこいいのだから、よほどにぎわっているのだろうと思いきや必ずしもそうとは限らないようです。
その一方で、どう見てもダサい、いかにも素人くさいサイトが案外多くのアクセスを集め、にぎわっていたりもします。
どうしてなんだろう? 私は疑問に思いました。
私はもともとコピーライターとして長年、広告制作の仕事に携わってきました。
広告の世界では基本的に、かっこいいもの、いわゆるセンスのよいものが高く評価されます。
もちろん、かっこよさといってもその中身は様々なのですが、ともあれ見た目のインパクトや洗練された表現といったものが何よりも高く評価される世界です。
そうして、消費者の目に触れる広告がかっこいいからこそ、そこで宣伝している商品も売れるものと、これまで多くの制作者はそう信じてきました。そのため少しでもセンスのあるものを作ろうと意気込んでいたわけです。
ところが、ホームページというものが世に出てくると、どうも何かが違うようだ、ということがしだいに明らかになってきました。
かっこいいサイトが必ずしも売れるサイトであるとは限らないということがわかってきたのです。
しかしそれはいったいなぜなのでしょうか? かっこいいデザインのサイトが人気が出ず、どう見てもかっこ悪いサイトが人気が出るというのはどういうわけなのでしょうか? 私は悩みました。
もしかしたら、そこには、かっこよさ以外の何か別の要因があるのではないだろうか、疑問に思った私は独自に研究を始めました。
そうして、行き着いたのが、関与度という問題です。
関与度とは何か? ざっくり言ってしまえば、関心の高さのことです。
わかりやすい例でいえば、商品へのこだわりなどがそうです。
いわゆるマニアと呼ばれる人たちの中には特定のモノに対して異常に高い関心を示す人がいますが、要するにその関心の度合いのことです。
いうまでもなく、こだわりの強い商品は、関与度の高い商品ということになります。
逆にティッシュペーパーや歯ブラシなど日常的によく使う必需品に対しては一般的にそれほど大きなこだわりを持って使っている人は少ないと思います。「とりあえず必要だから使っている」という程度で、その性能やブランドなどについてはあまり意識することのない商品です。これは低関与型の商品と言えるでしょう。
ところで、これは商品だけでなくメディアに対しても同じことが言えます。
たとえば、面白いテレビドラマなどを視聴している時は、わき目も振らず、食い入るように画面に見入っているはずです。これは関与度が高い状態です。
これに対して、ドラマの間に挟まれるコマーシャルは、一般にそれほど食い入るように見られることはありません。むしろ、どこにも集中することなく、ただぼんやりと画面を見ているだけという感じなのではないでしょうか。こういう状態を関与度が低いと言います。
要は、対象にどれだけ深い思い入れを持って接しているかの違いと言っても良いでしょう。それに対する真剣さ、集中力の違いというわけです。
広告心理学では、この関与度の高低によって、脳内での情報処理の仕方が異なるのではないかという仮説が出されています。情報処理の回路が異なるということです。
そして、その違いをそれぞれ高関与コミュニケーションと低関与コミュニケーションと呼んで区別しています。
もちろん、これが正しい仮説なのかどうかはわかりません。しかし、これに基づいて考えると、多くのことがらがうまく説明出来るということもあり、現在、関係者の多くはこの仮説を受け入れているようです。
さて、ここで重要なのは、高関与コミュニケーションと低関与コミュニケーションの場合とではそれぞれ、脳内の情報処理のルートが異なるということです。
これは何を意味しているのでしょうか?
それは関与度の高低によって効果的なアピールの仕方が異なるということです。
具体的に言えば、たとえばコマーシャルを制作する際は、低関与コミュニケーションを前提に制作する必要があるということです。
また立て看板やポスターのようなメディアもCMと同じ低関与型と考えられます。あらかじめそれを見ようと思って見るのではなく、突然視界に入ってくるわけですから。したがってこれらもまた低関与コミュニケーションを前提に制作する必要があるはずです。
ちょっと理屈っぽくなってしまいました。もしわかりにくいようでしたら、この関与度については、もっと簡単に考えても良いかと思います。
それは、批判精神の有無です。目の前に提示された情報の真偽に対して、どれだけの批判精神と警戒感を持って接しているかによって区分するということです。
一般に高関与コミュニケーションの場合、接触者は与えられた情報をそのまま鵜呑みにはせず、一定の批判を加えた上で、受け入れるかどうかの判断をすると言われています。
それに対して、低関与コミュニケーションの場合は、批判力が低下しているため、与えられた情報をそのまま鵜呑みにしてしまうケースが多いようです。
(これは書きかけの文章です。続きは‥いつか書きますーー笑)
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。