これは残念ながら動かしがたい事実です。いかに高度なマーケティングテクニックを駆使しようと、商品力のない商品を売ることはできません。もちろん一回きりなら売ることは可能でしょう。しかし、そこで使われるマーケティングテクニックは多くの場合、詐欺とほぼ同様の「売り逃げ」のテクニックでしかありません。
当然、そのようなテクニックはブランドの信頼性を大きく損ないます。したがって、仮に一時的に利益を上げることができても長期的にみればそれは自分で自分の首を絞める結果にしかならないでしょう。
もっともまったく絶望的なわけではありません。戦う土俵を変えるという手段があります。いわば敗者復活戦です。具体的には、商品の訴求ポイントを特定の見込み客向けに絞ることです。
どんな粗悪な商品であっても、市場側になんらかのニーズがあり、それと商品の訴求ポイントと合致させることができれば、そこには「商品価値」が生まれます。商品価値があれば必ず売れます。それは、どうしようもないとサジを投げられていたダメ社員が、ある特定の仕事をさせてみたところ予想を超えた能力を発揮したというのと似たケースといえるでしょう。
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。