マーケティング3.0の目的は「世界をよりよい場所にすること」だとされています。しかし、そうであるなら、そもそも世界をよりよい場所にできない商品や企業は退場してしかるべきなのではないでしょうか?
退場してしかるべき商品を「マーケティング」するのは自己矛盾だからです。ということは、マーケティング3.0の時代とはすなわち、産業構造における大リストラクチャリングの時代でもあるといえそうです。
その一方で、企業が退場させられ失業者が大量発生することは「世界をよりよい場所にすること」なのか、という素朴な疑問も生じます。
それをどうとらえるかは人それぞれでしょうけれど、いずれにせよ失業者へのケアのないそれは、長期的にはさておき、少なくとも短期的には「世界をよりよい場所にすること」とは到底いえないはずです。
そうした産業構造の再編を破壊的なものではなく、より建設的なものにするためにはベーシックインカムをはじめとした国家的な施策が不可欠なのではないでしょうか? そこでは失業者へのダメージを最低限のものとし、新しい職への再配置をスムーズにすることが急務だからです。
ということはどういうことか?
マーケティング3.0は企業だけが先走ってはその本来の目的を達成することができないばかりか、かえって逆行してしまうということです。マーケティング3.0が政府の施策との二人三脚の元で慎重に推し進めなければならないーー私がそう考える理由はまさにそこにあります。
売るためのマーケティングから課題解決のためのマーケティングを提唱する独立系シンクタンク「ミライニウム」を主宰するマーケティング研究者。コピーライター、雑誌ライター、プランナーとして30年以上にわたり、マーケティングの実践および研究を続けている。北軽井沢隣接宣伝研究所所長。