マーケティングからみたハレとケ

商品を買うもっとも深い動機は、ハレにある。ケガレを払い、元気を回復するために商品を購入するのだ。そのため、販促の動機付けにはしばしばハレが利用される。

ハレとは「晴れの日」の「ハレ」であり、非日常を意味する。ケ=日常の対立概念でもある。日常生活を営むエネルギーが枯渇すると「ケ」(=気)が減少し、「ケガレ」となる。そのケガレを祓い、エネルギー(元気)を充填させるために「ハレ」が必要とされる。「晴れ晴れしい」非日常空間に身を置くことで「ケ=気」を再び体内に取り込み、回復させるのだ。

かつて祭りはその「ハレ」の役目を果たしていた。しかし現代の消費社会にあって、その役目を果たしているのは消費である。商品はケガレを祓い、元気を回復させるために購入されるのだ。消費というものの本質もそこにある。そのため、消費の動機付けにはしばしばハレが利用される。

舶来物が舶来物であるという理由だけで珍重されるのもそれとは無関係ではない。日常の生活空間とは異質な外部世界からもたらされたものは「非日常」のエネルギーを宿すものであり、それ自体、生命力にあふれる聖なるモノであった。その昔、閉鎖的な村落で遠方から訪れた旅人が「マレビト」として尊重されたのも同じ理由からだ。珍しいもの、目新しいもの、舶来物はすべてケガレを祓う不思議な力があると信じられたのだ。

ちなみにストレスという言葉は本来医学用語として登場したものだが、いまではそれはほとんど「ケガレ」を表す代用語として本来の定義をはるかに超えた場面で安直に使用されている。そこには「ストレス=ケガレ」という構図から脱却するには「商品=キ=元気」の購入(ハレ)が解決策であると暗示することで販促につなげようという広告業界の隠れた意図があるように思う。

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