売れるECサイトのためのウエブデザイン術

ウエブデザイナーなら知っておきたいECサイトの効果的な表現手法

第1章  売れるECサイトのデザインとは?

売上とデザインは無関係?

「ウエブデザイナーはもう要らない」ーー。いまECサイト関係者の間で、こんな声がささやかれている。背景にあるのは、webサイトデザインへの不信の念である。

これまで、商業デザインの世界では、デザインが良ければ、それだけ商品も売れると信じられてきた。だから企業はデザインという、原価があってないような無形のサービスにも喜んでお金を払ってきたわけである。

ところが、webサイト、とりわけECサイトの場合、なぜかそうした比例関係は一見成り立たないようにみえる。それどころか、なまじデザインに凝ったばかりにかえって売上が低下したという逆のケースすら少なくないのが現実なのである。

実際、ECサイトの世界では、一見して自作とわかる稚拙なデザインの店が月数百万円を売り上げているかと思えば、プロのデザイナーに依頼して作ったオシャレなブランド店がさっぱり売れない、というデザイン上の逆転現象がしばしばみうけられる。

そのせいであろうか、ECサイト関係者の間では、webサイトデザインに対する評価はあまり高くない。曰く「売上とデザインは無関係」「凝ったデザインはかえって逆効果」「素人のデザインで十分」云々…。冒頭の「webデザイナー不要論」も、おそらくこうしたEコマース関係者の間にわだかまっていたデザインに対する不満が背景となって生じたものであろう。

しかし、ここであらかじめお断りしておくが、私はここで「デザイン無用論」をあらためて強調しようとしているわけではない。私の立場はむしろデザイナー有用論であり、この小論ではそのあたりを順を追ってじっくり解き明かしていきたいと考えている。
さて、話をもとに戻そう。

こうしたwebサイトデザインに対する消極論にはそれなりの理論的根拠もある。それは、ひとつには表示速度の問題である。webサイトの場合、凝った画像や大きな画像を多用すればするほど、ページ全体の容量が重くなり、その分、表示速度が遅くなる傾向がある。そのため、デザイン的に凝ったページほど、かえって商品情報が伝わりにくくなってしまうのだ。

関与で読み解くECサイトの表現

さらにこのwebデザイン不要説には、画像の表示速度以外にも別の根拠がある。それは、「関与」にまつわる問題だ。

関与というのは、ある対象(情報)に対してどれだけ意識的に、あるいは関心をもってかかわっているかという心理学の用語だが、研究によればこの関与レベルの高低によってひとの脳内にはそれぞれことなるコミュニケーションプロセスがひきおこされるという。 たとえば、一般の視聴者は、テレビコマーシャルに対し、それほど高い興味をもって接することはすくない。むしろ邪魔だと思いながらもなんとなくぼんやりとみているのがふつうだろう。このようにとくべつ意識を集中することなしにおこなわれるコミュニケーションのことを低関与コミュニケーションとよんでいる。

これにたいし、印刷媒体による広告、なかでも通販カタログなどは、いったん読者の興味を引いたあとは、かなり高い関心をもって読まれることがおおい。このようにある程度意識を集中したところにうまれるコミュニケーションは高関与コミュニケーションとよばれている。そしてこれらふたつのコミュニケーションにおけるもっとも重要なちがいは、情報をうけとる際、知覚的な防御をもつかもたないかというところにある。

知覚的な防御というのは、この場合、批判精神といってもよいだろう。つまり情報に接した際、高関与コミュニケーションの場合、その内容をことこまかに吟味しながらうけとるのにたいし、低関与コミュニケーションの場合は、そうしたチェック機能があまり働かずそのままうけとってしまうのだ。テレビコマーシャルが人間心理におよぼす問題については、これまでにもしばしば指摘されてきた。しかし、なかでももっとも大きな問題は、このように人々が無批判にメッセージをうけいれてしまう点にあるといえるだろう。

ここでそれぞれの伝達上の特徴をまとめてみよう。まず伝達のための媒介についてだが、高関与コミュニケーションの場合、これはテキストなど言語的な媒介がメインとなることがおおく、それにたいし低関与コミュニケーションの場合、絵や図像などシンボル的な媒介がメインとなることがおおい。

また意識レベルでいえば、高関与コミュニケーションの場合、顕在意識のレベルにおいてなおかつ批判精神のフィルターをとおして選別的に受容されるのにたいし、低関与コミュニケーションの場合、潜在意識のレベルでしかもなんの心理的検閲をうけることなくそのまま受容されることがおおいようだ。

さらに高関与コミュニケーションの場合、いわゆる左脳に訴える割合が高く、その意味で理性的なアピールに適しているといえる。逆に低関与コミュニケーションの場合、右脳に直感的に訴えることがおおく、その点、感性的なアピールに適しているといえよう。

高関与

●テキストによる伝達がメイン
●意識レベルでの伝達
●批判的
●理性に訴える
●左脳的

低関与

●デザインによる伝達がメイン
●無意識レベルでの伝達
●無批判的
●感性に訴える
●右脳的

高関与型メディアとしてのwebサイト

さて、それではwebサイトというメディアは低関与か、高関与か、はたしていずれであろうか。 といえば、いうまでもなく、それは高関与であろう。そのことは、webサイトが「プル型」のメディアとされていることからもわかる。最近メディアを区分するのに「プル型」「プッシュ型」という言い方がされるようになってきており、そのうちプル型というのは、こちらから能動的に情報にアクセスし、それを引っ張ってくるメディアであり、その代表格がwebサイトである。

これに対して、プッシュ型というのは、むこうからおくりだされてくる情報を受動的にうけとるかたちのメディアであり、その典型はテレビである。 プル型メディアであるwebサイトは、視聴者の「情報を得たい」という積極的な意志と能動的な行為を前提としている。したがってそこに生ずるコミュニケーションは、当然高関与であると予想される。 このwebサイトが高関与のメディアであるということは、次のようにさまざまなことを示唆してくれる。

webサイトでは、感性情報の役割が相対的に低下

まずひとつは、メッセージの伝わり方である。高関与型メディアであるwebサイトの情報は基本的に意識的なレベルで処理される。意識的なレベルで処理されるということは、理性的・左脳的な情報(一般に商品説明文などの文字情報がこれにあたる)の重要性が高まる一方、感性的・右脳的な情報(一般に図形や色彩などのデザイン情報がこれにあたる)の重要性が相対的に低下することを意味している。

これはどういうことかといえば、たとえば、ここに文字情報とデザイン情報でレイアウトされたECサイトがあるとしよう。そのうち、文字情報が十分説得力をもっていれば、デザイン情報が少しくらい説得力が乏しくても、お客様の購買意欲を喚起する上ではそれほど支障はないということである。

このことは、ECサイト=デザイン不要説を裏づけるひとつの理論的根拠となりうるかもしれない。 しかし、ここで誤解してならないのは、デザイン情報と感性情報との違いである。デザイン情報といってもそのすべてが感性情報になるとはかぎらない。たとえば、トップページの「豪華」なデザインを見て、お客様が「豪華な店である」という印象をもったとしよう。

それに対して「好きだ」とか「嫌いだ」といった感情レベルの反応をひき起こすだけなら、それは感性情報である。しかし、それに対して「ここは豪華な店らしい→したがって値段も高いかもしれない」といった理性的な判断に使われた場合、それはすでに理性情報といえるだろう。このような理性情報としてのデザインはいわゆる「説明的なデザイン」といいかえることができるかもしれない。

webサイトでは、計算されたデザインが必要

同様に文字情報もすべてが理性情報になるとはかぎらない。たとえば、文章が上手であればなんとなく「好意」を感じることがある反面、キザでいやみなやつという「嫌悪感」をもよおすかもしれない。またへたでもとつとつとした素直な文章は、それだけでなんとなく「好意」を抱き、それが信頼性をもたらす場合もあろう。 要はデザイン情報にせよ、文字情報にせよ、それが理性的な判断に使われたらば、それは理性情報であり、感情レベルでの反応をひき起こすものは感性情報であるといってよいだろう。

こうしてみてくると、ECサイトにおいて、デザインは不要であるとする説は誤りであることがわかる。ただし理性情報の役割が増加するだけに、デザインのひとつひとつについても、そこに含まれるメッセージの意味が厳しく問われることになる。すなわち、ECサイトにおいては、以前にもまして「計算された」デザインが必要となってくるのである。その意味では、「このほうがなんとなくかっこいいから」といった漠然とした理由からデザインすることは、もはや許されないといえるだろう。

また情報が意識的なレベルで処理されるということは、うそやごまかしが通用しないということでもある。なにせ相手は、目を皿のようにして情報を「精査」しているのだ。情報の裏にある論理的矛盾やあいまいさなどはたいがい見抜かれてしまうだろう。ECサイトにおいて、なにより「誠実さ」と「正直さ」、そして「情報公開」が重視されるゆえんであろう。

webサイトと動画の相性は、水と油

もうひとつここであげておきたいのは、ECサイトと動画との相性である。ここでいう動画とは、アニメーションGIFやフラッシュのような装飾的に用いられる動画ではなく、ストリーミング技術などを利用した一定の時間的長さをもつビデオ画像のことである。

現在、インターネット上で動画を扱う技術は急速に発達している。このままいけば、インターネット上で通常のビデオ画像が、テレビのように気軽に楽しめるようになる日もそう遠くないだろう。 だが、こうした動画がECサイトの主要なコンテンツになるとは考えにくい。というのは、動画は本来、プッシュ型の情報であり、プル型を基本とするwebサイトとは本質的に相容れないからである。

情報探索者にとってプル型メディアの最大の魅力は、情報探索プロセスを自分でコントロールできるという点にある。つまりプル型メディアであるかぎり、情報にアクセスするのも、またそこから離れて別の情報にアクセスするのも自由自在なのである。ところが、ビデオ画像はそうはいかない。それは、いったん始まったが最後、最初から最後まで見つづけなければならないのだ。途中、疑問を感じたとしても、こちらからのアクションは許されない。ただひたすら、ビデオ画像の前でおとなしくじっとしていなければならないのだ。

これは、能動的な情報探索者にとってみれば、メディアに対するコントロールを失ってしまうことを意味している。それは20世紀のテレビ世代がどっぷりとひたった受動的で衆愚的な空間に再び組み込まれることに他ならない。 ECサイトにおいて動画が敬遠されるであろう最大の理由はそこにある。

もっとも、動画ならではの効果というのもたしかにあるわけで、それがまったく不要だといってるわけではない。たとえば、商品の使用方法を、説明のための短い動画にして、希望する人に見てもらえるようにすることは、より詳しい情報を伝えるために有効な手段といえるだろう。 その点、将来のECサイトが、現在のテレビショッピングのようなかたちになることはありえないだろう。だが、おそらく今後は、そのようなプル型の情報をベースにして、プッシュ型の情報を適宜組み込むという形のハイブリッド型のECサイトが主流となるのではないだろうか。

第2章 ECサイトの制作モデル

ECサイトに限らず、webサイト全般にいえることだが、その制作にあたって一番とまどうのは、どのような表現がもっとも効果的なのかいまひとつ確信が持てない、ということではないだろうか。たとえば、トップページでは、看板となる画像をメインとして、デザイン的にシンプルにまとめたほうがよいのか、それとも逆にデザイン画像は必要最小限にとどめ、できるだけ文字情報のみで構成したほうがよいのか、またもし画像を使うとしたら、どういったデザインで、どのくらいの容量のものにすべきなのか…。

困ったことにこういった大小さまざまな疑問が、ECサイトデザインにはいちいちつきまとってくるのだ。 これが従来のカタログ制作や店鋪設計であれば、一から悩むことはそう多くない。そうした分野ではすでに制作(設計)上の基準や経験則がある程度蓄積されており、少なくともそうした制作上の規範にのっとっている限り、カタログ制作者や店鋪設計者は、おおきな間違いをおかす心配はないからである。

だが、ECサイトの場合、残念ながらそのような制作上の規範はまだきちんと確立されていない。そのため、効果的なECサイトを作ろうと思えば思うほど、つまり真剣な制作者ほど、どのような表現にすべきか、その細かい部分にまでいちいち頭を悩ませなければならない、ということになってしまうのだ。こうした制作上の規範の不在、あるいはあいまいさこそが、ECサイトの制作現場に混乱をもたらしている最大の理由といえるだろう。

ECサイトの機能分析

しかしながら、制作上の規範がないままではやはり不便である。そこで、ここではECサイトトの制作モデルを独自に構築してみようと思う。 だが、そのためにはまずECサイトというものが、そもそもどのような機能をそなえているのか、について知る必要があるだろう。

そこでここではまずECサイトの機能を、消費者の購買「行動」プロセスという側面から調べてみたい。

購買行動プロセスとは、消費者がECサイトを訪れてから商品を検討し、その結果、注文、さらにリピート購入にいたるまでの過程のことである。 ここではそれを便宜上、「訪問」「商品検索」「情報収集」「評価」「注文」「リピート購入」という6つのステップに分けてみた。

訪問

商品検索

情報収集

評価

注文

リピート購入

このうち「訪問」というのは、見込み客のECサイトへのアクセス行動を意味する。次に「商品検索」というのは、ECサイトにアクセスしたお客様がお目当ての商品を探す段階である。また「情報収集」というのは、お目当ての商品を探し出した見込客がコピーを読んだり、スペックを調べたりして商品情報を集めることをさす。

さらにそこで得られた情報をもとに競合商品と比較したり、企業の信頼性やブランドイメージについて判断をくだすのが次の「評価」段階。そして、もしここで「買うに価する」という評価がくだされれば、見込み客は注文フォームに必要事項を記入して送信ボタンをクリックするはずである。これが「注文」の段階だ。

さらにもし見込み客がその商品を気に入り、ECサイトの使い勝手もよければ、おそらくリピーターとなり、今後も継続的に購入してくれるだろう。この段階が「リピート購入」である。 ただ、ここで注意しなければならないのは、訪問の段階から注文の段階まで必ずしも時間的に連続して進行するわけではないことである。

とくに流れが断続しやすいのは、「情報収集」と「評価」の間だろう。たとえば、あるショップでAという商品情報を仕入れ、さらに別のショップでBという商品情報を仕入れた後、いったんインターネットへの接続を解除し、どちらを購入すべきかオフラインでじっくりーーそれも何日にもわたってーー「評価」するというのはけっして珍しいことではない。

またもうひとつ注意しなければならないのは、誰もが必ずこのプロセスを順序よくたどるとはかぎらない点である。これはとくにリピーターについていえることだが、すでに商品知識がある場合、途中の段階を飛ばしていきなり注文の段階にくるケースもなかにはあるだろう。

しかしながら、こうした一部の例外をのぞけば、ここに示した一連の流れは、ECサイトにおける典型的な購買モデルであるといってよい。

ECサイトとAIDMAの法則

ところで、こうした購買行動モデルと似たものにAIDA(アイーダ)の法則がある。AIDAの法則というのは、消費者が商品に接してから購買にいたるまでのプロセスをATTENTION(注目)、INTEREST(興味)、DESIRE(欲求)、ACTION(購買)という4つのステップにまとめたもので、購買心理プロセスモデルと呼ばれている。

このAIDAによれば、消費者はまず広告や店頭陳列などによって商品を認知し(ATTENTION)、ついで興味を抱き(INTEREST)、さらにそれに対する欲求が喚起され(DESIRE)、そして最終的に購買行動をおこす(ACTION)とされている。 なお、このAIDAには多くの変形モデルがあり、そのひとつが、AIDMA(アイドマ)である。

これはDESIREとACTIONとの間に「Memory」(記憶)というステップを加えたもので、日本ではAIDAよりむしろこのAIDMAのほうがよく知られている。

ちなみにここでいう「Memory」とは、商品名を記憶させるという意味である。 またこのMemoryの代わりに「Conviction」(確信)を入れたAIDCA(アイダカ)というモデルもあり、最近の消費者の購買心理プロセスとしては、このAIDCAのほうが、より正確といえるだろう。

というのは最近の消費者は、その商品がいくらよいものであると「理解」したとしても、ただそれだけでは動かず、それが本当によいものであると「確信」した上ではじめて購買行動に移るケースが多くなっているからだ。

ECサイトの制作モデルとしてのAIDMA

もちろん、実際の購買行動における心理プロセスはもっと複雑であろうし、比較的かぎられた購買パターンを持つECサイトにおいても、みながみなこのAIDMAという単純なモデルにあてはまるとはかぎらない。だが、それが一定の普遍性をもっていることもまた事実であり、そのため広告などの分野では、いまでも有効とされているマーケティングモデルのひとつなのである。

またこのAIDMAモデルがすぐれているのは、それがそっくりそのまま広告などの制作モデルとしても応用可能な点にある。実際、広告制作の現場ではいまでも多くの制作者が(意識するかしないかは別にして)このAIDMAモデルに則って広告を制作しているのである。

もっとも付け加えるならば、このAIDMAが有効なのは、通販カタログやチラシなど、いわゆる高関与コミュニケーション下においてであり、TVやラジオコマーシャルなどの低関与コミュニケーション下においては、必ずしも有効性をもつモデルではないともいわれている。だが、少なくとも高関与型メディアにおいては、その有効性はすでに実証済みである。したがって同じ高関与型メディアであるECサイトに、このAIDMAモデルをあてはめて分析することは十分妥当なことといえるだろう。

AIDCAモデルで分析するECサイト

それではこのAIDMAモデルが、はたしてECサイトにもあてはまるものかどうか、ここでちょっと検討してみよう。なおここではAIDMAではなくAIDCAを採用することにする。その理由はAIDCAの項でも述べた通り、このモデルのほうが消費者の購買心理プロセスとして、より現実に則していると考えられるからである。

さてこのAIDCAモデルをECサイトにあてはめる前に検討しなければならないのは、ECサイトを訪れる人たちは、いったいどのような経路をたどってアクセスしてくるのか、という問題である。それというのもアドレスを知らないお客様が直接、ECサイトにアクセスしてくることはありえないからである。

それは、たとえていえば、電話を引いたようなもので、ある人が電話を引いたからといって、電話番号を公開しないかぎり、誰もその人に電話をかけることができないのと同じ理屈である。

お客様がECサイトにアクセスしてくる経路はいくつか考えられるが、なかでも多いのは検索エンジンを通してアクセスしてくるケースであろう。また新聞、雑誌、テレビなどのマスメディアに広告を出していれば、それをみてアクセスしてくる人もいるだろう。さらにメールマガジンなどに広告をだしていれば、それによってアクセスしてくる人もいるはずだ。

また別のサイトから「リンク」が張られている場合、そこからアクセスしてくるケースも当然考えられる。そして ここで重要なのは、いずれの経路をたどるにしろ、特定のECサイトにアクセスするためには、まず何らかの形でそのアドレスを知らせるための「告知広告」が、必要だということである。このことは、ECサイトの制作モデルを考える上で、非常に重要な点でもあるので、十分理解しておいていただきたい。

「注意」を引いて「欲求」を喚起する

さて、以上を前提に、ECサイトにアクセスしてくるお客様の行動を、AIDCAモデルであとづけてみよう。 まず最初にお客様が接触するのは、検索エンジンやマスメディアによる広告、さらにメールマガジンや他のサイトの「リンク」などである。

これらの「告知広告」は、そこでお客様に対してECサイトへの注意を引きつけ、興味をもたせる働きをする。これはAIDCAモデルでいう、ATTENTIONおよびINTERESTの段階に相当しよう。

ここでもし、お客様に興味をもたせることができたら、とりあえず半分は成功だ。お客様は、自分でアドレスを入力するなり、リンクをクリックするなりして、ECサイトにアクセスしてくるだろう。 目的のECサイトにアクセスしてきたお客様の次の行動は、いったいなんであろうか。

それはおそらく、トップページをざっとながめながら、そこに自分の欲しい商品があるかどうかを探しだすことであるはずだ。そして、もしそこに欲しい商品を見つけた場合、お客様はその商品説明文をじっくり読んで購入を検討することだろう。これはAIDCAモデルでいうDESIREの段階にほかならない。

確信から購買へ

AIDCAモデルでは次にCONVICTIONという段階がくるが、ECサイトにおいてこのCONVICTIONは、きわめて重要な要素である。それは、お客様の多くがECサイト――インターネット通販というものに対して、まだそれほど大きな信頼をおいていないからである。

もっとも、そのことは通信販売がその昔、直面した問題であるのと同じく、発展途上にある新しい販売手法としてさけられない宿命のようなものかもしれない。その意味では、近い将来、ECサイトが社会のなかで確固たる市民権を得て、より多くのお客様に受け入れられるようになるかどうかは、われわれECサイトにかかわる者の自覚と行動いかんにかかってくるといってもよいだろう。お互いこころしておきたいものである。

さて、このCONVICTION段階における具体的なテクニックについては、後述するが、ここではとりあえず、お客様が商品について「これは間違いないものである」との確信を得て、同時にショップ側の姿勢についても「信頼」してくれたとしよう。次に見込み客がとる行動はなんであろうか。そう、注文である。もはやここまでくれば、お客様は一刻も早く商品を手に入れたいと思うものである。とすれば、ショップ側のここでの役目は、お客様の前に注文フォームをさしだし、できるだけすみやかに注文ボタンをクリックさせること以外にない。これがACTIONである。

ECサイトとAINDCASモデル

以上、ECサイトにおいても、AIDCAモデルが原則としてあてはまることはご理解いただけたものと思う。しかし、ここで「原則として」というただし書きをつけたように、くわしくみていくとECサイトには、AIDCAモデルでは説明が困難な段階がふくまれていることがわかる。 ここで、さきほど分析したECサイトの購買行動プロセスと、このAIDCAモデルを比較してみよう。図2をご覧いただきたい。

訪問⇔注意(=Attension)
商品検索⇔商品検索(=Search)
情報収集⇔欲求喚起(=Desire)
評価⇔確信(=Conviction)
注文⇔購買(=Action)
リピート購入⇔顧客満足(=Satisfaction)

ここからECサイトの購買行動プロセスとAIDCAとの間には、次のような対応関係があることがわかる。

訪問⇔注意・興味(=Attension・Interrest)
商品検索⇔?
情報収集⇔欲求喚起(=Desire)
評価⇔確信(=Conviction)
注文⇔購買(=Action)
リピート購入⇔?

しかしながら、ECサイトには、「商品検索」と「リピート購入」という、従来のAIDCAモデルでは説明の難しいステップがふくまれている。これに対しては、それぞれサーチとサティスファクションという新しい段階を対応させてみよう。

サーチ(探索)というのは、訪問(アクセス)してきた消費者が、お目当ての商品情報を探すことであり、商品検索に相当する。またサティスファクションというのは、一度購入してもらった人に対し、顧客満足を与え、リピート購入を促すことをさし、リピート購入に対応する。

さてこうして導き出されたのが、AIDMAならぬAISDCASというECサイトの購買心理プロセスモデルである。そしていうまでもなく、このAISDCASはそのままECサイトの制作モデルとしても有効である。

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